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【名場面】家康、家臣の諫言を聞き入れる

家臣の諫言を許さない者は滅びる

※『常山紀談』『名将言行録』より

家康が浜松を居城としていたころのことである。

-- 家康居城・浜松城にて --

ある日の夜、家康と本多正信の前で、とある家臣が懐から文書を取り出した。

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家康

なんじゃそれは?

とある家臣

はっ。それがしが兼ねてから書きつけておいたものでございまして、恐れながらもご参考になることもあるかと思いましてご高覧いただきたく存じます。

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これに対して家康は怒るどころか、むしろ感心して言った。

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家康

ほほう。それは感心なことじゃ。
正信!それを読み上げてみよ。

本多正信

承知いたしました。それでは・・
え~かくかくしかじか・・・

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家康

うむうむ、それはもっともなことじゃ。

家康は一条ずつ読み終えるたびにうなずいていた。そしてすべてが読み終えると・・

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家康

うむ。そちの志には感動して言葉もないぞ。
これからも遠慮せずに告げるがよい。つくつぐ感心なことじゃ。

とある家臣

ははっ!ありがたきお言葉。

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こうして家康は繰り返し褒め、諫言をした家臣は退出していった。

そして家康は正信に訪ねた。

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家康

正信。いま読んだことをどう思う?

本多正信

はい。殿のお役に立つようなことは特にないかと存じますが・・。

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家康

いやいや、そうではない。
先ほどの者が思ったことを書きつけたものだから、それはそれでよいのじゃ。

本多正信

??

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家康

もっともわしの参考にすることはないが、日頃から感じたことを書き留め、時機をみて、わしに見せようと思っておったその志は何にもたとえがたい。それが役に立つかどうかなどは関係ないのじゃ。

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家康

自分の過ちというのは気づかぬものじゃ。
小身の者なら朋友との交わりなどがあるから過ちを知りやすいだろうが、大身の者は自分の過ちを知ることができぬ。

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家康

大身の者の言うことが道理にかなっていなくても、それに異をとなえる小身の者はないものじゃ。大身の者の損というものじゃ。

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家康

およそ人の上に立って諫言を許さぬ者で、国を失い、家が滅びなかった者は昔からないのじゃ。

本多正信

・・・さすがは殿。

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正信はのちに、子の正純にこのことを語り、涙したという。

諌める者の志

※『常山紀談』『名将言行録』より

ある夜、諌める者について家康が語ったとされる話である。

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家康

総じて主君を諌める者の志というのは、戦場で先駆けするよりも勝っておる。

そして、家康はその理由を長々と語り始めた。

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家康

戦いに臨んで1番に進み出ることは、身を捨ててのことではあるが、必ずしも討死はせぬ。

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家康

たとえ討死しても名誉にもなるじゃろうし、幸運にも功をあげれば恩賞で子孫が繁栄する基にもなる。
だからその働きで得るものはあっても、失うものはないのじゃ。

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家康

しかし、主君を諌める者は10のうち9までは危うい勝負じゃ。
主君が無分別で悪事を好むようならば、疎まれ、疎むようになる。ついには処罰され、また、妻子をも滅ぼすことになるものじゃ。
失うものはあっても、得るものがないものじゃ。

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家康

"武功"というのは我が身の名誉や利益のためじゃが、その心を持って"主君への諫言"をすることはないじゃろう。

これが合戦での先駆けよりも "主君への諫言" が勝る理由である。


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