【やさしい歴史用語解説 その1】「堀」

明石則実
 2022/01/24
一歴史ファンとして、これからちょっとしたブログを少しずつ更新していこうかと思います。

日本の歴史には様々な用語があり、現代の日常生活に直結している言葉もたくさんありますよね。とはいえ時代物のドラマや映画などを見た時、「この用語って何だろう?」と感じる時ってありませんか?

そんな時に、歴史用語をたくさん知っていれば知っているほど便利です。ややこしい用語まで覚える必要はありませんが、知っておいて損にはならないはず。覚えておきたい用語をやさしく解説していきますので、ぜひ参考にして下さいね。

では、まず第1回目のテーマは「堀」です。堀と聞いて皆さんがイメージするのは、満々と水を湛えて水鳥が羽根を休める公園でしょうか。たしかに正しいのですが、日本の城にあるのは水堀ばかりではありません。実際にはたくさんの種類が存在していました。

たとえば地名などで「堀内」や「堀場」または「堀川」など聞いたことはありませんか?実はお城に関係していることが多いのです。「え、堀川に住んでるけど、堀なんかないよ」という方がいるかも知れません。

今は痕跡こそありませんが、かつては堀が存在した可能性が高いのです。そういった意味では、お城は身近にあるもの。何せ「城」と呼ばれる遺構は全国に数万も存在しているのですから。

さて、おおまかに分けて堀には2種類あります。まず広く知られているのは水堀でしょうか。江戸時代になってから造られた近世城郭に多く、防御だけでなく水運の利便さも大きなメリットとなっていました。

現在の大阪城や松江城など、遊覧船が周回できるほどですから、かつては船を使って物資をお城に搬入していたそうです。
※上記画像は勝竜寺城の水堀


そして、もう一つは空堀ですね。読んで字の如く、単に土を掘って造った防御施設でした。水堀と比べて工事期間や費用が低く抑えられるため、中世だけでなく江戸時代に入っても多用されています。

さらに大きなメリットがもう一つ。堀を造るために掘った土を利用できるという点でしょうか。ココと思った場所に土を盛り重ねていけば「土塁」という優れた防御施設になりますし、堀とセットにすれば、敵が登れないほどの高い壁となります。

たとえば2メートルの深さの堀を造り、2メートルの高さの土塁を盛れば、それだけで4メートルの障害となるわけです。これを城郭用語では「掻き上げ」と呼びますね。
※上記画像は神足神社(勝竜寺城の外郭)の復元空堀


しかし空堀にもデメリットはあります。雨で地盤が緩むと崩落しますし、土ですと雑草がどうしても生えてしまうため、敵兵が登りやすくなるのです。だからメンテナンスの継続は欠かせません。昔の人々は定期的に土を固め、均し、丁寧に草取りをしていたのでしょう。

また空堀の分類もさまざまです。山の尾根を断ちきって敵を寄せ付けない空堀を「堀切(ほりきり)」といいますし、登って来る敵を狙いやすくするため、斜面に沿って堀ったものを「竪堀(たてぼり)」と呼びます。
その発展形として竪堀を連続させた「畝状(うねじょう)竪堀」も存在しますね。

さらに用途に応じて、堀の形状もいくつか種類がありました。堀底をV字に加工した「薬研堀(やげんぼり)」や、堀をそのまま通路とした「箱堀」など、時代が下るにつれて技術も発展していきました。

このように堀を中心とした技術を駆使したのが、関東の覇者として君臨した北条氏でした。関東地方はもともと関東ローム層を主な地盤としており、粘土質の地質となっています。粘りのある土は加工しやすく、深く掘っても崩れにくいという特性があるのです。

また敵兵が登ろうとしても足元が簡単に滑るため、防御するにはもってこいだと言えるでしょう。
堀がワッフルのように見える山中城や、鉄壁の山岳要塞となった八王子城、さらに「土の芸術」とまで言われた杉山城など、それらは築城のお手本として知られていますね。

「堀」は単に土を掘って削ったものだと思うことなかれ。そこには先人たちの知恵と工夫が込められているのです。
  この記事を書いた人
明石則実 さん
戦国好き・お城好きの歴史ライターです。愛犬と城郭や史跡を巡ることが大好きで、 ...

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