「江戸っ子は宵越しの銭をもたねぇ」ってどういうこと?

髙橋俊雄
 2022/02/10
「江戸っ子は宵越しの銭をもたねぇ」というセリフを聞いたことはありあせんか?要は今日、稼いだ金を明日まで持っているなんざ、恥っさらしだぜ、ということです。

老後の生活が心配で一生懸命、貯金に励んでいる現代の我々から見れば「何言ってんだ。無一文で朝を迎えろってことか?そんなことしたら困るだろうが」ですよね。

歴史の深い京都や大阪に比べ、江戸は徳川時代になって開けた歴史の浅い都市でした。ですので関西文化の奥の深さには、とても対抗できなかった江戸の一般庶民は関西文化のお金に対する執着を逆手に取り、しみったれた真似ができるかい、という、きっぷの良さを売り物にした、いわうる「いなせ」という勢いの良さで対抗しようとしたのです。

そして、その「いなせ」を表す言葉の一つが「江戸っ子は宵越しの銭なんざ持たねぇ」というというものだったのです。

どうやって暮らすの?


しかし実際問題として「無一文のすっからかん」で次の日の朝を迎えたら、朝ごはんも食べられません。今だったら「いきなりホームレス」です。

朝ごはんは誰かに奢ってもらうとして、それからどうするんだ? という点が心配になります。しかし、大丈夫だったのです。江戸の町には天秤棒を肩にかけて物を売り歩く人が沢山いました。そして、そういった人達は「元締め」の所にいけば商売道具一式を1日単位で貸してくれたので、すぐに商売が出来たのです。

飴売り、焼き芋売り、納豆売り、しじみ売り、水売り、金魚売りなど天秤棒で売り歩く商売は実に色々な種類があり、江戸の大通りは、そういった売り歩き商人が沢山おり、生活に必要な物は出かけないでも、家の外に出ればたくさんいる売り歩き商人から買えたのです。

そして、こういった売り歩きの商人は1日が終わると「元締め」に道具を返し、料金を払い、残りの売上は自分の物にできました。つまり、「簡単に日銭稼ぎ」が出来た訳です。

もちろん、大工などの職人、店を構えている商人や大店で働いている人や武士はそうではありません。つまり町民がそういった暮らし方をしていたのです。まさに「その日暮らし」ですが、やろうと思えば「いつでも好きな商売が出来る」のですから気楽でもあります。

「今日はなんか、かったるいから1日中、寝てよう」とか「やる気起きねぇから銭湯で1日、だべっていよう」とかも本人の思うがままでした。

自分はいいとして奥さんや子供は?


江戸の町は、近郊の町から人が流入してきて大変に人口が多い都市になりました。しかし流入してくるのは、ほとんどが「働いて銭を稼ごう」という男性だったのです。

その結果、江戸の町における男女比は9:1くらいと言われるくらい、極端に女性が少なくなってしまいました。ですので一生独身と言う方が少なくありませんでした。だから多くの町民は奥さんや子供の心配はいらなかったのです。

当時でも女性は「安定した職業の旦那様」を希望したので、数少ない女性も職人、大店勤めの商人に嫁ぐことが多く、その日暮らしの町人と結婚しようという人は稀だったのです。

現代と比べると


こういった江戸の町人の気ままな暮らしぶりを見ると「いいなぁ」と思う現代人も多いのはでないでしょうか?会社に帰属して働くサラリーマンには江戸の町民のような自由はありません。何もしたくない時は何もしなくて良いし、それで肩身の狭い思いをすることも無いのです。

現代では以前の終身雇用制度も崩壊し、能力のある人でも「社則ですから」の一言で定年になると会社を追い出されてしまいます。そうなると「その後、どうしよう」と悩む方も多いと思います。もし江戸時代のような仕事の仕方が出来たら、そんな心配はいらないのですが。

しかし現代でも江戸時代のような仕事の仕方は出来る可能性があります。私の知り合いに2坪のテナントを借りて「テイクアウト専門のコーヒー店」を開業した方がいます。

ちょうど通勤路にあたっていることもあり、結構な売上が出ているそうです。こういった食品を扱う店は「食品衛生責任者」と言う資格が必要ですが、それは1日、講習を受けるだけで取得できます。また、たい焼き屋などは原料が常温保存でき、必ず、どこでも一定の需要があるので「誰がやっても、まず失敗しない商売」なのだそうです。

こういった店を開業するのは、それなりの資金と多少のスキルがあれば簡単にできるのです。

一般的に一次産業である農業、漁業に従事している人は年をとっても元気です。それに対し定年を迎えた会社員の哀れぶりは目を覆うものがあります。つまり「自主的な仕事をしている人」の方が、よいより人生を送れるのが今の世の中、といっても過言ではなさそうです。

会社という組織の中でずっと仕事をしてきた方に独立を勧めても心理的に受け入れがたい物があるのは事実です。ですが、どのみち「死ぬまでそこに居られる訳ではない」のも事実です。そして多くの男性は「仕事」というものを「会社勤め」という非常に狭い範囲でしか考えられない傾向が強いものです。

しかし「仕事」を奪われた男性は精神的にも肉体的にも衰えが早く、定年退職後、数年でボケてしまったりメンタル面でおかしくなる人が非常に多いのです。ですので、「仕事」の定義をもう一回、見直してみることをお勧めします。

江戸時代に比べたら現代は手続きの難しい時代ですが、商売をしようという気持ちは江戸時代の町民と同じであり、それは学生時代に文化祭で模擬店をやるのと同じような感覚でやっても良いものなのです。
  この記事を書いた人
髙橋俊雄 さん

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