【やさしい歴史用語解説 その8】「乱」と「変」

明石則実
 2022/02/17
歴史上の出来事を表すワードとして頻繁に出てくるのは、「乱」や「変」と付く事件ではないでしょうか。たとえば「応仁の乱」や「大塩平八郎の乱」、または「正中の変」や「禁門の変」などなど。
いずれも似通った意味に聞こえますが、いったい違いは何なのでしょうか?

ネット上の噂では、クーデターに成功すれば「変」。失敗すれば「乱」とされている場合もありますが、それだと応仁の乱(1467年~)はクーデターではありませんし、意味がそもそも通じなくなります。

それでは正しい定義とはどのようなものでしょうか?実は学習院大学の安田元久氏が、1980年代の著書の中で違いをきっちり述べられていました。

乱とは「世の乱れ」「戦乱」「大規模な政治的混乱=内乱」といった事象を指し、変とは「凶変」「変化」「小規模な政治変革」、あるい「あり得べからざる変事」などを意味すると書かれています。
※応仁の乱を描いた『真如堂縁起絵巻』掃部助久国筆 (wikipediaより)

ちょっとわかりにくいですね…「乱」と「変」について、もう少しかいつまんで解説しましょう。


政治権力に対する武力反抗や反乱が「乱」にあたり、特に鎮圧された場合が多いということです。例えばクーデターに失敗した「保元・平治の乱(1156年、1160年)」や「大塩平八郎の乱(1837年)」など。いずれも首謀者は厳罰となっています。

また内乱状態が生まれた状況を指すものとして「乱」を用います。「壬申の乱」や「応仁の乱」などですね。単に政権や主導権を握るための武力闘争だということです。
※大塩平八郎の乱で大阪が炎上(wikipediaより)



次に「変」を見てみます。政治権力者である天皇や皇族、あるいは将軍などが討たれたり、配流されたり、不当な立場に置かれた事件が該当するそうです。倒幕計画が失敗して後醍醐天皇が隠岐に流された「正中の変(1324年)」、また守護大名によって将軍が殺された「嘉吉の変(1441年)」などが挙げられるでしょうか。
※正中の変の首謀者の一人・日野資朝(wikipediaより)

「変」についてもう一つ。政治上で対立している両者の間に起こった陰謀事件も指すそうです。いわば政敵を蹴落とすために仕組まれた事件のことですね。藤原氏が皇族に謀反の疑いを掛けた「長屋王の変(729年)」、同じく藤原氏が伴善男に罪をなすりつけた「応天門の変(866年)」などがあります。

これが「乱」と「変」の違いを表す定義となりますが、もちろん例外はありますし、嘉吉の事件のように「乱」と「変」の両方を用いる場合もあります。ある程度の区別はあるけれども一定はしていない。そんな解釈になるでしょうか。



もう一つ、ややこしい用語に「役(えき)」というものがあります。「小田原の役(1590年)」や「西南の役(1877年)」などなど。
もしこれを定義付けるとすれば、「人民を公的に使うこと」を意味するでしょう。例えば戦争のために人民を徴発したり、物資を徴収することなど。

いわば政府や為政者が人々を軍事的に徴用するところから、戦いという意味での「役」という呼称が生まれたわけです。「前九年・後三年の役」や「文永・弘安の役」「文禄・慶長の役」などもそうでしょう。

「役」には軍役の義務があるという意味合いが含まれているのです。
  この記事を書いた人
明石則実 さん
戦国好き・お城好きの歴史ライターです。愛犬と城郭や史跡を巡ることが大好きで、 ...

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