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明治の滑稽(こっけい)ジャーナリスト・宮武外骨

明治の雑誌イメージ
明治の雑誌イメージ
 明治は「新聞」や「雑誌」の文化が花開いた時代です。出版社ごとに個性があり、政党の機関紙としての新聞や、連載小説を掲載した娯楽新聞など、さまざまなジャンルの情報が世に溢れました。

 そんな有象無象の新聞雑誌界で、ひときわ異彩を放っていたのが宮武外骨(みやたけ がいこつ 1867~1955)です。

読者の度肝を抜くユーモラスな表現と、皮肉のきいた社会風刺で人気を博しました。

宮武外骨とは

 宮武外骨は慶応3年(1867)に讃岐(現在の香川県)で誕生。外骨は若い頃から好奇心旺盛で、当時は珍しい自転車を乗り回し、新しい情報文化である新聞に興味をもちました。そして19歳の時に本名の「宮武亀四郎」から「宮武外骨」へ改名。

 「外骨」の由来は「亀は外側に骨、内側が肉」という中国の故事にちなんだものの、世間ではこれが本名だと思われなかったため、「是本名成(これほんみょうなり)」という実印までつくったのだとか。

 若い頃のエピソードだけでも、いかに外骨がユニークな人物かがわかりますね。

シニカルで滑稽な新聞雑誌

 その後、上京した外骨は数多くの新聞・雑誌を刊行します。外骨が得意としたのがパロディや風刺の効いた記事でした。当時の大ニュースだった大日本帝国憲法の「憲法発布式之図」の構図を真似て「頓知(とんち)研法」なる絵を載せ、発禁と投獄処分を受けることに。

滑稽新聞の誕生

 そんな宮武外骨の代表作が明治34年から発行された『滑稽新聞(こっけいしんぶん)』です。当時としては驚異的な発行部数を誇っていました。

 内容もユニークで、現代でも雑誌のお正月特集には豪華な付録がつくものですが、滑稽新聞の付録はなんと紙くず!

 古新聞にわざわざ「紙屑買の大馬鹿者」と印刷した付録をつけるという、あっと驚く趣向で読者を魅了します。

『滑稽新聞』の後継誌『大阪滑稽新聞』創刊号(1908年11月3日号) ※出典:wikipedia
『滑稽新聞』の後継誌『大阪滑稽新聞』創刊号(1908年11月3日号) ※出典:wikipedia

規制を逆手に取った表現

 明治の雑誌では、今のような過激なエロ表現は規制の対象でした。しかし、滑稽雑誌ではそうした規制を逆手に取った表現を得意としていたのです。

 「出征美人の凱旋」という写真記事では、芸者などの美人を写した写真絵葉書の唇部分がすり減っていたり、穴が空いていたり、なにやら白い跡がついていたり…。

 聡明なる皆様なら言わずともおわかりでしょう。『滑稽新聞』にはこうした「匂わせる」エロ記事が多いのです。

 他にも、裸体を掲載できないので、女性の裸の版木をバラバラにした状態で掲載するなど、エロスとユーモアのあるアイデアで、読者の好奇心をくすぐっています。

強情な正義の鉄槌

 宮武外骨のジャーナリズムは「滑稽」や「パロディ」だけではありません。不正を働いた人間に対して誌面で徹底的な批判をくり返しています。

 特に滑稽新聞で槍玉に挙げられたのが「野口茂平」なる人物で、結核の偽薬を販売したとして外骨は「詐欺師」、「野蜘蛛」などと称し、2年にもわたり誌面で叩き続けました。

 その結果、野口氏は薬の販売を中止したとか。いくら不正を働いたとは言え、ここまでバッシングされたら野口氏もたまらなかったでしょうね…。

投獄中も執筆活動

 昔は検閲が厳しく、政府や華族を批判した内容は即座に発禁処分でしたし、悪いときは発行人は禁固刑。

 しかし、そんな出版の自由が少ないときでも、宮武外骨は果敢にタブーに挑みます。生涯で4度も筆禍事件で投獄されていますが、檻の中の様子を克明に記載した文章を書いたり、心理学を勉強したりと、とにかく凝りないのです。

おわりに

 明治から大正時代にかけて、新聞・雑誌業界で名を馳せた宮武外骨。昭和に入ると明治期の出版物の収集に力を注ぎました。

 戦争中、出版がままならない時でも、収集した絵葉書を選別し、編集を行っていました。絵葉書の選別方法もウィットに飛んでいて、それだけで一つの作品のようになっています。

 常にシニカルな視点を持ち、滑稽と正義を貫いた宮武外骨。彼が残した出版物は100年経っても色褪せず面白いのです。

1951年頃の宮武外骨(出典:wikipedia)
1951年頃の宮武外骨(出典:wikipedia)

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  この記事を書いた人
日月 さん
古代も戦国も幕末も好きですが、興味深いのは明治以降の歴史です。 現代と違った価値観があるところが面白いです。 女性にまつわる歴史についても興味があります。歴史の影に女あり、ですから。

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