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黄泉の食べ物を食す「黄泉戸喫」、絶対に拒否すべきその恐ろしい理由

 「黄泉戸喫(よもつへぐい)」とは、簡単に言えばあの世で食べる食事のこと。食べてしまうと、もうこの世には戻れません。食べた瞬間から、黄泉の国の人になってしまうからなんです。

 今回は、『古事記』やギリシャ神話から、日本のアニメやマンガにも登場する黄泉戸喫のご案内です。

黄泉戸喫とは?

 黄泉のかまどで作られた食べ物を食べることを「黄泉戸喫(よもつへぐい)」といいます。

 黄泉とは死者の国を表す言葉で、「戸」はかまどを、「喫」は食べることを意味しています。実は「黄泉戸喫」は、日本の神話に出てくるだけではありません。遠く海外でも古くから伝わる神話の中に、何度も登場しているんですよ。

黄泉戸喫を行うと?

 うっかり「黄泉戸喫」をしてしまうと、もうこの世には戻れません。黄泉の食べ物を食べると、黄泉の地に住んでいるとみなされているからです。実は日本の古事記や遠く離れたギリシャ神話でも、「黄泉戸喫」に関わる話があるのです。

 『古事記』においての「黄泉戸喫」は、イザナギノミコトとイザナミノミコトの夫婦神の話が有名ですね。妻イザナミノミコトは、多くの子や八百万の神々を生み出しました。しかし、夫イザナミノミコトが火の神である火之迦具土神を産み落とした際に、大やけどによって亡くなってしまいます。

 イザナギノミコトは妻に会いたい一心から黄泉の国へおもむき、一緒に帰ろうと説得するのですが、イザナミノミコトはすでに、黄泉の火で調理した料理を食べてしまっていたのです。

イザナギ(右)とイザナミ(左)。二人は天の橋に立ち、矛で混沌をかき混ぜて島(日本)を作っている画(小林永濯 画。wikipediaより)
イザナギ(右)とイザナミ(左)。二人は天の橋に立ち、矛で混沌をかき混ぜて島(日本)を作っている画(小林永濯 画。wikipediaより)

 ギリシャ神話ににも「黄泉戸喫」の話が見られます。

 ──ゼウスを父、豊穣神デーメーテルを母に持つペルセポネ。野原で花を摘んでいるときに、冥府の神ハーデスが現れ、彼女を冥府に連れ去ったのです。怒ったゼウスはハーデスに娘を開放するよう伝え、ハーデスはこれに応じます。しかしそれまで冥府の食べ物を拒んでいたペルセポネでしたが、空腹からザクロの実を12粒のうちの4粒だけ食べてしまったのです。

 とりあえずは天界に戻ったペルセポネは、母にザクロを食べたことを伝え、食べたザクロの分(1年の1/3)を冥府で過ごすことに。この時激怒したデーメーテルが「さらわれた上に空腹でやむなく食べたのだから再度の冥府行きは拒否する」と主張したのですが、「冥界の食べ物を食べたら冥界に属する」という決まりを覆すことはできませんでした。
───

 冥府とはあの世のことで、日本の黄泉の国と同じですね。

宮崎アニメ「千と千尋の神隠し」にも登場

 「黄泉戸喫」は、日本のアニメ・マンガ、更にはゲームにも登場しています。その代表例なのが「千と千尋の神隠し」です。

 物語の最初、千尋と両親が異世界(あの世)に足を踏み入れた際、両親が異世界の飲食店の食事を食べてしまいます。これで両親は、豚の姿になってしまいます。そしてその地の食事を食べなかった千尋は、この地の者になれずに身体が消えていくのですが、ハクの助けによってこの地の食べ物を口にして、消えずに済んだのです。

黄泉のかまどで作った食べ物

 黄泉のかまどで作った食べ物を食べてしまうと、「この世に戻れなくなる」という話でした。国も文化も違う『古事記』とギリシャ神話、そこに「黄泉戸喫」が描かれているなんて、とても興味深いですよね。

 生きているうちに死後の世界に行くなんて、そうあるようなことではないですが、もし行くようなことがあっても、決して黄泉の食べ物は口にしないように。覚えておいてくださいね。

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  この記事を書いた人
五百井飛鳥 さん
聖徳太子に縁のある一族の末裔とか。ベトナムのホーチミンに移住して早十数年。現在、愛犬コロンと二人ぼっちライフをエンジョイ中。本業だった建築設計から離れ、現在ライター&ガイド業でなんとか生活中。20年ほど前に男性から女性に移行し、そして今は自分という性別で生きてます。ベトナムに来てから自律神経異常もき ...

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