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絵葉書は近代の情報ツールだった。戦況や偉人のブロマイドまで多種多様

絵葉書
絵葉書
 現在の絵葉書は、観光地の風景やきれいなイラストが印刷され、お土産や季節のあいさつ用として使われています。

 しかし、インターネットのなかった昔、絵葉書は重要な情報ツールでした。そこには、今では考えられないような情報が印刷され、人々に伝えられていたのです。

昔の絵葉書は情報ツール

 大正時代に「時事絵葉書」というものがあり、毎週土曜日に発売されていました。

 南方諸島の人々の来日や、海難事故で生還した兵士の顔写真などが紹介され、まさしく現代の新聞や雑誌の役割を絵葉書が担っていたのです。

 現在のように、すべての人が読み書きをできるわけではなかった昔は、こうした絵葉書で情報をえていたのかもしれませんね。

 また、絵葉書は営業ツールとしての利用も盛んでした。

 新しい施設やインフラをいち早く絵葉書で紹介したり、芸者さんたちはお座敷へ来てもらうため、写真絵葉書でお色気ショットを撮影したりと、現在のSNSのように活用していたようです。

絵葉書から歴史が見えてくる

 情報ツールとしての役割をもっていた当時の絵葉書からは、歴史が見えてきます。

 現在の常識では考えられませんが、当時はプライバシー保護の概念がなく、凄惨な現場まで絵葉書になっていました。

乃木大将自決(明治)

 明治天皇が崩御された明治45年、陸軍大将・乃木希典(のぎ まれすけ)が夫人とともに殉死。その模様を絵葉書は克明に伝えています。

 乃木大将と夫人の肖像写真、葬儀に集まった人々の様子のほか、なんと、血痕も生々しい自決部屋の写真までが絵葉書になっていたそうです。

関東大震災(大正)

 大正12年に起こった関東大震災。当時の被害の様子も克明に記録され、絵葉書として売り出されました。驚くことに、震災の被害にあった人々の死体を、そのまま撮影した絵葉書もあったそうです。

広島商品陳列所(大正)

 大正4年、広島に建てられた商品陳列館(物産陳列館)はドームが特徴的な石造りの洋館でした。
当時、この建物を紹介した絵葉書が作られています。実はこの建物は、のちの原爆ドームです。

 原爆の印象があまりに強いため、戦争前にどんな建物かを想像することはありませんでしたが、原爆ドームは最初から原爆ドームではなかったのですね。

 当たり前のことですが、古い絵葉書からは、こうした日本の歴史を垣間見ることができるのです。

こんなものまで!驚きの絵葉書事情

 情報ツールであり、SNSでもあった昔の絵葉書。そのため、現代の我々がみると「こんなものまで!」と、驚くようなものを絵葉書にしています。

偉人の絵葉書

 乃木大将など軍人は憧れの大将として人気がありそうですが、ほかにもさまざまな偉人たちが絵葉書となっていました。

 清水の次郎長は、映画や小説で有名な大親分ですが、実は実在の人物です。本物の次郎長は実業家でもあり、英会話学校の経営などを行っていたそうです。

 絵葉書ではそんな次郎長の写真とともに、彼の生家の写真までが絵葉書になっていました。個人情報の厳しい現代では考えられない絵葉書ですね。

 ほかにも、渋沢栄一や後藤新平など、経済界で活躍した偉人たちが、その業績を紹介した絵葉書となっています。

産業・科学の絵葉書

 絵葉書の定番として、近代的な建築や航空機などが紹介されています。これらは、当時の日本の科学や産業を知らせる役割もあったのでしょう。

 そんな中、現代からみると「こんなものまで?」と思うような題材がありました。

 自動車教習所は、現代ではどこにでもある施設ですが、自動車が珍しかった昭和初期には、そうした教習所の様子が絵葉書になっています。

 また、変わり種として、レントゲンに関する絵葉書がありました。実際にX線で写した手の骨の写真とともに、撮影の様子などが印刷されています。

あとがき

 昔の絵葉書は、当時最先端だった技術や、流行、時事ニュースを伝える情報ツールとしての役割がありました。

 新聞より手軽に、簡単に情報が入手できる点では、現代のSNSに非常に近い気がします。

 その後、情報ツールはラジオやニュース映画、テレビへと変化し、現在ではインターネットが情報を得る主流となっていますが、道具が変わっても「自分の興味を相手へ伝える」という本質は変わっていないのですね。

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  この記事を書いた人
日月 さん
古代も戦国も幕末も好きですが、興味深いのは明治以降の歴史です。 現代と違った価値観があるところが面白いです。 女性にまつわる歴史についても興味があります。歴史の影に女あり、ですから。

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