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巨大仏像の歴史~大仏から映画まで

日本は巨大な仏像が多い国です。仏教国として知られるタイやベトナムと比べ、それほど信仰心があついわけでもありませんが、なぜか日本各地には大きな仏像が建てられています。

仏に救いを求めていた古代から近世はもちろん、明治から現代に至るまで、巨大仏がつくられ続けているのは、一体どうしてなのでしょうか。

奈良の大仏から続く巨大仏像の歴史

奈良時代に有名な東大寺の大仏が建立されてから、時代ごとに大きな仏像が各地でつくられてきました。そうした中には戦乱や災害で被害を受け、今は失われたものも多くあります。

有名な奈良の大仏

巨大仏の中でも特に有名なのが「奈良の大仏」です。奈良の大仏は天平時代、疫病がまん延した国を仏の力で安定させることを目的とし、聖武天皇によって計画されました。

その後、戦争や災害で大仏は何度も倒壊してしまいます。現在の大仏像は主に鎌倉から江戸時代に再建されたものです。しかし、台座の蓮や体の一部などに、天平時代につくられた部分が残っています。

江戸時代は大仏殿がなく、野ざらしにされた大仏を見て「自分には傘があるのに、大仏さまは雨ざらしになっている」と涙した僧・公慶上人は長い全国行脚で資金を集めて再建を行いました。

やがて、大仏殿再建には、たくさんの庶民が無償で協力し、材木や私財を運んだそうです。公慶上人は再建を見ることなく亡くなりましたが、その後、無事に大仏殿は完成し、現在私たちは大仏殿の壮麗な姿をみることができます。

幻の京都大仏

奈良の大仏は有名ですが、実は京都にも大仏があったのです。東山にある方広寺には、19mという巨大な大仏が建立されました。この大仏は豊臣秀吉が作らせたもので、大きいもの好きな秀吉が奈良の大仏に対抗したのかは定かではありませんが、奈良の大仏は高さ15mを上回るように作られていました。

その後、京都大仏は慶長伏見地震の際に倒壊してしまいます。秀吉の死後は息子の秀頼によって再建されたものの、その方広寺の鐘の文言で徳川家康に因縁をつけられてしまい、豊臣家崩壊の原因に…。

一説によると、家康は秀頼に社寺仏閣の修理を促すことで、豊臣家の資産を使わせるように仕向けたとか。

その後、京都大仏は何度か修復されるものの、昭和に入り火事により消失し、今では幻の大仏となっています。

近代に作られた巨大仏の歴史

巨大仏が作られたのは奈良や鎌倉など、古い時代だけかとおもいきや、昭和に入っても大仏熱は衰えず、日本各地で大きな仏像がつくられ続けています。

近年では戦争や災害で犠牲となった人々を弔うため、巨大仏が建立されています。

最近の巨大仏の建立は、地元の資産家が地域への貢献と信心のために建てられることが多く、鉄骨やコンクリートで作られたそれらの仏像は、より大きく、より個性的になっていきました。

近年になり、巨大仏の建立が権力者や寺社から庶民に移ると、より大きく、個性的な姿の仏像が作られるようになりました。これらのユニークな巨大仏は観光地としても人気があり、私たちの身近な存在になっています。

超巨大・牛久大仏

今や巨大仏の代名詞となった茨城県の牛久大仏。全長120mという日本一の高さを誇ります。

展望台からは東京の街並みやスカイツリーが見えるという点を見ても、牛久大仏がいかに大きいかが伝わると思います。

牛久大仏は、浄土真宗東本願寺派によって1993年に完成しました。親鸞聖人ゆかりの地に、阿弥陀如来の12の光明にあやかって120mの大きさで作られました。内部には墓地や仏舎利の典侍、写経スペースなどが設けられ、宗教テーマパークです。

特撮と幻の巨大仏

昭和初期に作られた映画『大仏廻国(だいぶつかいこく)』は、大仏が立ち上がり、名古屋の街をめぐるという奇想天外なSFです。監督は特撮の巨匠・円谷英二の師匠である枝正義郎。当時の特撮技術を駆使して作られましたが、残念ながらこの映画、フィルムは現存しません。(2018年にリメイクされました。)

そんな幻の映画『大仏廻国』のモデルとなったのが、愛知県にある聚楽園大仏です。美濃国(岐阜県)出身の実業家・山田才吉が建立しました。

鉄筋コンクリートでつくられたこの大仏は、建立当初は白毫(お釈迦さまの眉間にある巻かれた髪の毛)から光を放っていたとか…。そんなところも特撮映画のモデルにふさわしい巨大仏です。

まとめ

日本は他の国々に比べて信仰心の薄い国だと言われています。しかし、近代になってもなお巨大な仏像がつくられ続け、そこに祈りをささげる人がいるのです。

昔も今も人は、仏の姿が大きければ大きいほど、救いを大きく感じるのかもしれません。

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  この記事を書いた人
日月 さん
古代も戦国も幕末も好きですが、興味深いのは明治以降の歴史です。 現代と違った価値観があるところが面白いです。 女性にまつわる歴史についても興味があります。歴史の影に女あり、ですから。

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