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『源氏物語』で帝が碁で賭けたすごいものとは
- 2023/07/24
その作中で、現代人も楽しむあるゲームが頻繁に登場するのをご存じですか? それが貴族らの間で大いに愛好されていた「囲碁」です。
碁を楽しんでいたのは男性ばかりではありませんでした。作中では少女から年配の女性まで非常に幅広い層の人々が碁を打っています。光源氏は碁が強かったという直接的な記述はありませんが、後に妻となる紫の上に教えるシーンがあるので、なかなかの腕前だったのではないでしょうか。
「竹河」の帳では、美しい姉妹の姫が亡き父の形見である桜を賭けて3番勝負をします。それをたまたま1人で歩いていた蔵人少将が覗き見て、姉方への思慕を募らせます。この優美な場面は国宝の『源氏物語絵巻』にも描かれ、1989年には国際文通週間の記念切手になって世界に発信されました。
当時は対局で何かを賭けるのが普通だったようです。そして作中で最も重大な賭け碁が行われるのは「宿木」の帖。このお話では、天皇である今上帝が、光源氏の次男である薫の君を呼び出して碁を打ちます。この際、今上帝は「よい賭け物がありそうだけど、軽々しくは渡せないので、どうしようか」などと思わせぶりなことを言います。
こうして3番勝負をした結果、薫の君が1つ勝ち越しました。今上帝が悔しそうに「この花を一枝ゆるす」と言うので、薫の君は庭先に咲いていた菊を折って自分の物にしました。
なーんだ、賭けていたのは花かと思うのは早合点。その後2人は和歌をやりとりするのですが、今上帝は皇女である女二宮を薫の君の妻にしたいと考えており、「よい賭け物」とは女二宮だったことが暗に示されます。平安貴族のやりとりは、優雅だけれども随分まだるっこしいですね。ともあれこの2年後に、薫の君は女二宮をめとります。
「娘を賭けの対象にするとは、なんて酷い親だ!」と思う方もいるでしょう。しかし当時の碁は人物を測る物差しで、単なるギャンブルではなかったのです。源氏物語の中でも、光源氏とその弟である蛍の宮が芸道について議論する場面があり、「書道と碁には天分の差が表れる」という台詞があります。
碁の対局は「手談」の別名があるくらい濃厚なコミュニケーションだといわれます。今上帝が持ちかけた3番勝負は、いわば婿を見極める最終テストのようなものだったのかもしれませんね。
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