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  • 刀剣と甲冑
 2019/03/19

刀剣展示の「太刀」と「刀」はどう違う?戦国期ならではのスタイル徹底解説

日本刀イラスト

刀剣をモチーフにしたメディア作品のヒットにより、空前の「日本刀ブーム」が巻き起こっています。 美術品としての価値は世界的な評価があるものの、これまではどちらかというとハードルの高いジャンルとして、一部の愛好家のものというイメージが強かった日本刀。それが女性や若年層のファンを獲得し、一気に裾野が広がったことは一種の社会現象と言って差し支えない熱気を感じさせます。

各地の博物館では刀剣をテーマにした特別展が目白押しで、古今の名刀が惜しげなく披露され、貴重な文化財を直接目の当たりにできる機会が急増しました。 人気のある刀剣が出展される特別展には長蛇の列ができ、定員オーバーになることすらあるという沸騰ぶりです。

初めて本物の日本刀を目にした人たちが異口同音に言うことは、その「美しさ」についてです。 鍛え上げられ、研ぎ澄まされた鋼が見せる、深く澄明な輝き。そして幾層にも折り重なった地金が描く、緻密な紋様。刀匠が魂を込めて焼き入れた、あまたの刃文。
それらは単なる武器を超えた、いわば「神器」とも呼べるほどの哲学性をもって、見る者の心に迫ります。

そんな神々しさすら感じさせる日本刀ですが、展示を見ていると実に様々な分類がなされていることに気が付くかと思います。 長いものや短いもの、反りの深いものや浅いもの・・・一口に「日本刀」といっても、細かくカテゴリーが分かれているのです。

そこで本コラムでは、よく見かける「太刀」と「刀」についてその分類を解説したいと思います。 両者はどう違うのか? また、その見分け方はどうか? そんなちょっとした知識を仕入れてから鑑賞すると、もっともっと刀剣が面白くなるはずです。(文=帯刀コロク)

「太刀」とは?

「太刀打ちできない」「助太刀する」「一太刀浴びせる」等々、「太刀」とつく慣用句をよく耳にしますね。 「たち」は「断ち」、すなわち「切断するもの」といった語源に発する武器を意味しています。

刀剣の代名詞的に使われることもありますが、これは日本刀の一つのスタイルに対する分類名でもあります。 太刀は元々、馬上から斬り下ろすための兵装として発達したものと考えられており、戦国期頃までの鎧武者の装備として特徴的なものの一つです。

重要文化財「北条太刀」の展示写真
重要文化財「北条太刀」の展示写真(出所:wikipedia

刃の側を下に向けて腰から吊るすようにし、刀身は斬撃のショックを吸収するよう深い反りをもっています。 また、「拵え(こしらえ)」と呼ばれる鞘や柄などの部品は堅牢に造られ、戦陣・馬上での厳しい環境に耐えられるよう工夫されています。

戦が日常的だった頃の、比較的古いスタイルを伝えるのが「太刀」であると言えます。

「刀」とは?

「刀」といえば当然のごとく日本刀を指す言葉ですが、正確には「打刀(うちがたな)」というスタイルのものを意味します。これは「太刀」とは異なり、刃の側を上向きにして腰帯に直接鞘を差して装備します。

古くは12世紀にその例が見られますが、軽装や護身用として使われるのが一般的で、大・小の打刀が武士の正式な装備として定められたのは江戸時代に入ってからのことです。

片手で「抜き打つ」ことに適した刀、という意味で「打刀」と呼ばれているものと考えられ、時代劇などで侍が帯びている刀のイメージはこれにあたることが多いようです。

日本刀の展示写真
日本刀の展示写真(出所:wikipedia

腰に吊るすのではなく帯に通すため、太刀に比べて拵えはシンプルで鞘も平滑に造られるようになりました。 これは戦国期の常時戦争状態から、江戸時代の平時へと移行していったことを端的に示す武士の装備でもあります。

野戦仕様の太刀から、殿中などの室内でもすばやく対応できる打刀へと最適化が図られた結果とも言えるでしょう。 したがって、江戸期を通じての作刀の多くは、この打刀のスタイルであることが特徴です。

「太刀」と「刀」の見分け方は?

さて、それでは博物館や美術館などで見られる「太刀」と「刀」について、簡単に見分ける方法をお伝えしましょう。

展示パネルには大抵の場合、「太刀・〇〇」「打刀・〇〇」などと分類名が記されていますが、それを見なくても遠くからでも一目で分かる方法です。それは、「装備した時の刃の向き」の通りに展示されている、ということです。

前述した太刀の装備法について思い出してみてください。

「刃を下向きにして腰から吊るす」のが特徴でした。一方、刀(打刀)は「刃を上向きにして帯に差す」ようにできています。 つまり、刀剣は太刀であれば刃を下向きにして、打刀は刃を上向きにして展示するのが原則となっているのです。

多くは刀身と外装部分を分けて展示しており、刀架に白布などをかけ、そこに刀身のみを飾るのが一般的かと思います。 その様子から、「太刀」か「刀」かが一目瞭然で分かるようになっているのです。

もっとも、太刀というには随分と反りが浅く感じるもの、逆に刀というには深い反りをもっているものなどがあり、そんな疑問を感じながら来歴や解説を読むのも楽しいものです。

他にも付属する柄や鞘などの外装部の形状や、茎(なかご)のどちら側に「銘」が切られているか等々で判別する方法もありますが、例外もまた多いものです。

まずは展示されている刃の方向をチェックして、「あれは太刀だ!」「あれは刀だ!」と、判別してみてください。きっと、刀剣鑑賞がもっともっと面白くなるはずですよ!


【主な参考文献】
  • 『歴史群像シリーズ【決定版】図説 日本刀大全Ⅱ 名刀・拵・刀装具総覧』歴史群像編集部編 2007 学習研究社
  • 『図鑑 刀装のすべて』 小窪 健一 1971 光芸出版
  • 『別冊歴史読本 歴史図鑑シリーズ 日本名刀大図鑑』本間 順治監修・佐藤 寒山編著・加島 進協力 1996 新人物往来社




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