大河ドラマ「どうする家康」で注目される徳川家康。その新たな人物像を、直木賞作家・安部龍太郎が最新の学説をもとに描く!

歴史研究の成果により、戦国時代の捉え方は大きく変わりつつあります。歴史小説の第一人者・安部龍太郎が、最新の研究成果に基づく戦国時代の実像と、そのなかで見えてきた新たな家康像を明らかにします。

あまたの英傑たちがしのぎを削り刃を交えた戦国時代。背後で時代を突き動かしていたのは、当時の世界情勢でした。


ライフワークとなる巨編小説『家康』に取り組む作家・安部龍太郎が、最新学説と現地取材、大きな枠組みの作家的想像力で、これまでにない家康像と「家康天下取りへの道」を描き出す歴史読み物です。

「桶狭間の戦」「三方ヶ原の戦」「長篠の戦」「小牧長久手の戦」「関ヶ原の戦」といった家康が戦い抜いた合戦をグローバルな視点から見つめ返し、今川義元、武田信玄、織田信長、豊臣秀吉といった英傑たちとの交わりを日本史を貫く2つの力学の視点から読み解くことで、新たな家康像を浮き彫りにします。

ポイントとなるのは、家康を天下人に導いた終生の思想「厭離穢土 欣求浄土(おんりえど ごんぐじょうど)」の読み直しでした。戦国時代像を刷新する歴史学の成果に基づきながら、天下人への道を描き直し、人間・家康に深く切り込みます。私たちの知る「天下取りの物語」とは違う真実がここにあります!


■著者プロフィール
1955年福岡県生まれ。久留米工業高等専門学校卒。東京の図書館司書を経て本格的な執筆活動に入る。1990年、『血の日本史』で単行本デビュー。

『彷徨える帝』『関ヶ原連判状』『信長燃ゆ』『下天を謀る』『レオン氏郷』『冬を待つ城』『おんなの城』等、歴史小説の大作を次々に発表。2015年から徳川家康の一代記となる長編『家康』を連載開始。2005年に『天馬、翔ける』で中山義秀文学賞、2013年に『等伯』で直木賞を受賞。

筆者近影
筆者近影

【目次】

■第一章 世界史のなかの戦国時代と家康
◇なぜ戦争は終わらないのか ◇高まる「家康」への関心と期待 ◇変わってきた戦国時代のイメージ ◇家康の生涯を描く二つの理由 ◇信長・秀吉が目指した日本とは ◇関ヶ原の戦いのもう一つの意味 ◇農本主義の意義 ◇政治的なリアリスト ◇家康の遺訓の本当の意味 ◇「厭離穢土 欣求浄土」を掲げたのはいつ?

■第二章 大航海時代としての戦国時代
◇大航海時代の幕開け ◇スペインとポルトガルによる世界分割 ◇鉄砲伝来に秘められた狙い ◇キリスト教の拡大とイエズス会 ◇ポルトガルの世界戦略 ◇キリシタン大名の「事情」 ◇信長の先進性の源はどこにあったのか ◇戦国大名は流通経済から生まれた ◇戦乱の時代となる三つの原因 ◇律令制と天皇のシステム ◇戦国時代のシルバー・ラッシュ ◇謎に包まれた「堺」 ◇堺の繁栄と鉱物資源 ◇茶の湯の政治学

■第三章 人質時代の家康
◇家康のルーツと「十八松平」 ◇清康・広忠・家康 ◇家康は織田家に攫われていない ◇今川家での意外な人質暮らし ◇家康が今川氏から学んだもの ◇家康を助けた人質時代の人脈 ◇築山殿との本当の関係 ◇人質時代に形作られたもの ◇家康と家臣団の結びつき

■第四章 戦国大名としての自立
◇桶狭間の戦いをどう見るか ◇桶狭間の戦いの真相 ◇間違った「桶狭間の戦い」観が歪めた近代日本 ◇水野信元の仲介で清須に ◇家康はなぜ清須同盟を結んだのか ◇三河一向一揆の真の意味 ◇塗り替えられる中世 ◇家康、戦国大名として自立する

■ 第五章 武田信玄との相克
◇家康と信玄の密約 ◇密約の抱えていたクリティカル・ポイント ◇信玄の失点 ◇信玄を出しぬく ◇家康の輝かしい外交勝利 ◇信玄はなぜ敗北を喫したのか ◇「三年の鬱憤」を晴らす信玄 ◇三方ヶ原の戦いの敗北はどのような種類の敗北なのか ◇信玄のたくみな戦略・戦術 ◇なぜ浜松城から出撃したか ◇後ろを見せて行軍する敵勢 ◇信玄の死に様 ◇三方ヶ原の大敗から学んだこと ◇家康、再起の条件

■第六章 家康の逆襲
◇長篠の戦いには前哨戦があった ◇武田勢の侵攻を迎える家康の構え ◇家康が狙った「後詰め決戦」 ◇家康の仕掛けた調略 ◇退路を断たれた武田方 ◇家康の「十倍返し」◇午前八時、合戦開始 ◇長篠に消えた鉛弾はどこにいった ◇鉛同位体から何が分かるのか ◇戦国のサプライ・チェーンと信長・家康 ◇家康に影響を与えたキーマン ◇家康と信元の微妙な関係 ◇水野信元の最期 ◇家康にまつわる女性たち──祖母と母 ◇家康にまつわる女性たち──正室 ◇家康にまつわる女性たち──妻たち

■第七章 家康の苦悩と成長
◇武田家の凋落 ◇謎の大賀弥四郎事件 ◇築山事件に及ぼした影響 ◇家康の決断◇築山殿の送った密書 ◇築山事件の幕引き ◇勝頼はなぜ家康に敗れたのか ◇武田氏滅亡と家康 ◇信長の「東国御一統」と家康の処遇 ◇いまも残る勝頼の伝承

■ 第八章 信長包囲網と秀吉・光秀・家康
◇第一次信長包囲網の幕を開けた近衛前久 ◇信長包囲網、作動開始 ◇義昭と信長の不和 ◇義昭の挙兵 ◇信長が作った大型船の背景 ◇第一次信長包囲網の崩壊 ◇足利家と鞆の浦 ◇「鞆幕府」対「安土政権」◇信長は何に敗れたのか ◇信長が目指した革命とは ◇信長と預治思想 ◇光秀と信長 ◇秀吉が信長に仕えた時代 ◇秀吉から見た信長 ◇家康と光秀・秀吉

■ 第九章 本能寺の変の真相と波紋
◇絞られてきた本能寺の変の「問題」 ◇本能寺の変の裏にあった「二つの対立」 ◇信長と朝廷の対立 ◇信長とイエズス会の決別 ◇イエズス会ヴァリニャーノの手紙 ◇イエズス会が目をつけた秀吉 ◇本能寺の変後の家康◇本能寺の変から家康が受け取ったもの ◇禁中並公家諸法度の持つ意味 ◇信長から継承しなかったもの

■ 第十章 乱世最後の覇者から真の王者へ
◇天正壬午の乱と家康 ◇秀吉の天下へ ◇「環伊勢湾戦争」という知られざる天下分け目の戦い ◇広がり続ける戦火 ◇秀吉の天下構想と織田政権 ◇秀吉の政治方針 ◇秀吉とイエズス会 ◇慶長三年の敗戦と石田三成 ◇関ヶ原の勝利の本当の意味 ◇江戸城と江戸の町作り ◇家康死後の江戸改造計画◇家康が信長・秀吉から引き継いだもの ◇乱世の覇者という達成 ◇乱世の覇者から真の「王者」へ

■おわりに

【商品情報】
書名:家康はなぜ乱世の覇者となれたのか 世界史の視点から読み解く戦国時代
著者:安部龍太郎
出版社:NHK出版
発売日:2022年10月28日
定価:1,540円(税込)
判型:四六判並製
ページ数:224ページ
ISBN:978-4-14-081919-7 
URL→https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000819192022.html
Amazon→http://www.amazon.co.jp/dp/4140819197

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