大阪歴史博物館 特別企画展「発掘!大名たちの蔵屋敷-「天下の台所」に集う米・物・人-」を開催します
- 2024/09/25
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【投稿】戦ヒス編集部
大阪歴史博物館では、令和7年(2025)1月11日(土)から3月3日(月)まで、6階特別展示室において、特別企画展「発掘!大名たちの蔵屋敷-「天下の台所」に集う米・物・人-」を開催します。
江戸時代の大坂は天下の台所として大いに栄えていました。多くの藩は、年貢米や特産品を売りさばくため、中之島とその周辺に蔵屋敷を構えました。その数は天保年間(1840年頃)には120邸あまりに達しました。本展では、日本各地の諸藩の財政を支えると同時に、堂島米市場誕生をはじめ大坂発展の原動力となった蔵屋敷について、最新の発掘調査成果を中心に、絵図・古文書なども紹介しながら、実態を描き出します。
近年、中之島とその周辺では数多くの蔵屋敷が調査され、佐賀・広島・高松藩等のように船入・蔵・御殿を備えた蔵屋敷から、船入を持たず敷地いっぱいに蔵のみを設けた秋田矢島藩のものまで、様々な蔵屋敷のかたちがあることがわかってきました。出土した木簡や貝殻、陶磁器などをもとにして、邸内での仕事や暮らしぶり、交流の様子を描き出すこともできるようになっています。
このような蔵屋敷について、その誕生から終焉までを俯瞰することで、日本の近世社会の中で大阪が担ってきた大きな役割や重要性を広く知っていただく機会にしたいと思います。難波宮、大坂城と並び、都市大阪を代表する歴史遺産、大坂蔵屋敷に新たな光を投げかけます。
※なお、本展覧会は、地方独立行政法人 大阪市博物館機構と一般財団法人 大阪市文化財協会の包括連携協定に基づいて共催する事業です。
●主な展示資料
・佐賀藩大坂蔵屋敷絵図
元禄5年(1692)
日本生命保険相互会社蔵【大阪市指定文化財】
佐賀藩(鍋島家)蔵屋敷は現在の大阪高等・地方・簡易裁判所の場所にありました。敷地は約4,200坪に及び最大規模の蔵屋敷のひとつです。絵図には堂島川に面した船入が描かれ、中心に御殿、南側に水色で彩色された米蔵が並んでおり、米の入札と米切手発行を行う会所も示されています。船入の石垣は平成2年(1990)に発見され、大阪における蔵屋敷発掘調査のさきがけとなりました。
・米切手
文化10年(1813)
大阪歴史博物館蔵
諸大名は領地から運んだ年貢米を大坂の蔵屋敷に持ち込み、入札によって米を取引しました。落札した商人に渡された証券が米切手であり、切手に記された藩の蔵屋敷で米と交換することができました。この米切手が米市場で盛んに売買されました。
・鍋島
江戸時代中期頃(17世紀末~18世紀前葉)
佐賀藩蔵屋敷跡(北区)
大阪市教育委員会蔵
「鍋島」は、江戸時代に佐賀藩の藩主である鍋島家によって作成された特別な磁器です。将軍家への献上を主な目的とし、利益を度外視して作られた最高水準の磁器でした。一般市場には出回らず、発掘調査で見つかることは稀ですが、佐賀藩蔵屋敷跡の発掘調査では総数354点もの鍋島が出土しました。特に盛期の作品は、原料となる陶石、成形・焼成に至るまでこだわり抜かれています。出土品の多くは、蔵屋敷が大火の被害を受けた際に捨てられたものであり、表面の細かな傷痕から実用されていた可能性が高いと考えられています。
・角筆(かくひつ)
江戸時代後期(19世紀中葉)
中之島蔵屋敷跡(北区)
大阪市教育委員会蔵
角筆は墨を使わず筆圧だけで文字を書く筆記具です。高松藩蔵屋敷跡から見つかった角筆は牛馬骨製で全長15.3cm(写真前)、15.9cm(写真奥)のものであり、毛筆を精巧に模しています。角筆で記した文字は紙を光に透かさないと見えないため、秘密の記録に使われました。一例として、明治2年に高松城内で起こった抗争の際、旧高松藩士が角筆のみで記した獄中記が残されています。
・泡盛(あわもり)の瓶
江戸時代中・後期(18世紀後半~19世紀前半)
中之島蔵屋敷跡(北区)
大阪市教育委員会蔵
焼締陶器の瓶は、琉球の壺屋焼(つぼややき)と呼ばれる焼物で、泡盛と呼ばれるお酒の容器として使われました。江戸時代、島津氏を通して、泡盛は献上品として主に江戸へ運ばれ、大坂へは御礼参りとして大坂城代と大坂船奉行へ1~2壺が献上されていました。出土品は鳥取藩蔵屋敷跡や高松藩蔵屋敷跡などから見つかったもので、薩摩藩からの贈り物であったかもしれません。はるばる琉球から運ばれてきたお酒として、または腹の病や刀傷に効く薬として泡盛は珍重されていたようです。
・化学陶磁器
明治時代前半(19世紀後葉)
中之島蔵屋敷跡(北区)
大阪市教育委員会蔵
江戸時代に蔵屋敷が集中した中之島は、水運による物資運搬に適していました。このため明治時代前半になると、中之島には様々な工場が建てられました。津山藩蔵屋敷のあった敷地では、強酸性の硫酸を保存した硫酸瓶(りゅうさんびん)をはじめ、薬品容器や実験に使う化学陶磁器が見つかりました。これらは造幣局などで生産した硫酸を原料としてソーダ製品や晒粉(さらしこ)、肥料などを製造する化学工場で使われたとみられ、大阪の近代産業の幕開けを示す貴重な資料です。
■関連行事
・「蔵屋敷を掘る」講演会(その1)
日時:令和7年1月25日(土)
午後1時30分~4時30分
(受付:午後1時~)
内容:「蔵屋敷の基礎知識」
豆谷 浩之
(大阪歴史博物館 学芸員)
「ゴミ穴から探る蔵屋敷のくらし
-住人の変遷(松江・今治・津山藩)から」
大庭 重信
(一般財団法人 大阪市文化財協会 学芸員)
・「蔵屋敷を掘る」講演会(その2)
日時:令和7年2月15日(土)
午後1時30分~4時30分
(受付:午後1時~)
内容:「蔵屋敷の蔵と産物―高松藩蔵屋敷の場合」
松本 百合子
(大阪歴史博物館 学芸員)
「海の大名-高松藩蔵屋敷跡の発掘調査から」
南 秀雄
(一般財団法人 大阪市文化財協会 学芸員)
・考古学散歩「蔵屋敷を歩く」
日時:令和7年1月18日(土)、2月1日(土)
いずれも午前10時~12時30分
(受付:午前9時30分~)
案内:豆谷 浩之・杉本 厚典
(大阪歴史博物館 学芸員)
・スライドトーク「発掘!大名たちの蔵屋敷展、ここが見どころ!」
日時:令和7年1月11日(土)、
2月11日(火・祝)、2月22日(土)
いずれも午後1時30分~2時15分(受付:午後1時~)
案内:杉本 厚典
(大阪歴史博物館 学芸員)
※関連行事の詳細は、決まり次第当館ホームページにてお知らせします。
■開催概要
名称:特別企画展
「発掘!大名たちの蔵屋敷-「天下の台所」に集う米・物・人-」
主催:大阪歴史博物館、
一般財団法人 大阪市文化財協会
後援:公益財団法人 大阪観光局
会期:令和7年1月11日(土)~3月3日(月)
※火曜日休館、
但し2月11日(火・祝)は開館、
翌12日(水)は休館
開館時間:午前9時30分~午後5時
※入館は閉館の30分前まで
会場:大阪歴史博物館 6階 特別展示室
〒540-0008 大阪市中央区大手前4-1-32
電話 06-6946-5728
ファックス 06-6946-2662
https://www.osakamushis.jp/
(最寄駅)
Osaka Metro谷町線・中央線「谷町四丁目」駅2号・9号出口
大阪シティバス「馬場町」バス停前
観覧料:常設展示観覧料で観覧いただけます。
大人600円(540円)、
高校生・大学生400円(360円)
※( )内は20名以上の団体割引料金
※中学生以下、
大阪市内在住の65歳以上の方(要証明証提示)、
障がい者手帳等をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料
展示資料数:約500点
■取材について
取材をご希望の場合は、下記担当までご連絡ください。
(連絡先)
大阪歴史博物館 企画広報課 企画広報係
電話 06-6946-5728
ファックス 06-6946-2662