戦国サバイバル飯「兵糧丸」 松の皮からウナギまで、知られざる驚きの配合!

  • 2026/02/10
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 大昔から「腹が減っては戦ができぬ」と言うとおり、どれほど激しい合戦であっても、腹が減るのが人間というものです。しかしいつ敵が襲ってくるか分からない極限状況で、悠長に調理している余裕がないことも少なくありません。そこで兵糧丸(ひょうろうがん)が重宝します。これを取り出して、行軍の最中など忙しい時に頬張ることもあったようです。

 ところでこの兵糧丸は美味しかったのでしょうか。今回は兵糧丸の気になる中身や作り方などを紹介したいと思います。

「兵糧丸」は武士の必須アイテム

……兵糧丸のたぐいを腰の小袋に貯えておくのも、各自の才覚である……
※『北越軍談』より

 戦国時代の軍隊では、基本的に食糧は自己負担でした。各大名家や領主によって基準はまちまちですが、よほど長期間の従軍でなければ、当局からの配給はなかったようです。

 そんな時、保存が利いて栄養を素早く摂取できる「兵糧丸」を用意しておくのは、身分の上下を問わず常識とされていました。中には「食い物は敵から奪え!」と勇ましい者もいたでしょうが、やはりアテが外れた時のリスクに備えておくのが現場の基本と言えます。

 という訳で、兵糧丸にはどんなものを入れていたのか、各家のレシピを見ていきましょう。

戦国武将・大名家のレシピ

竹中半兵衛の兵糧丸レシピ

・米:五合(約750グラム)
・松の甘皮:一斤(約600グラム)
・朝鮮人参:適量

※竹中半兵衛『軍法極秘伝』より


 わずかな手勢で斎藤竜興から稲葉山城を奪いとる知略を見せ、その後は木下藤吉郎(のち豊臣秀吉)の軍師として活躍した竹中半兵衛(たけなか はんべゑ)は、このような兵糧丸レシピを残しています。

 松の甘皮(樹皮)なんて食べられるのか?と思ってしまいますが、現代でもアカマツの内皮を使った「松皮餅」という秋田県の郷土料理がありました。松皮を入れると赤紫色に染まるほか、保存性が高まり冷めても硬くならないというメリットがあるそうです。

 半兵衛の兵糧丸の具体的な作り方は載っていないものの、炊くなり蒸すなりした米に、同じく蒸した松皮と朝鮮人参の粉を混ぜて団子にしたのでしょう。米と松皮の吸水率をそれぞれ約2倍と仮定した場合、炊き上げると1.5キロと1.2キロ。合わせて2.7キロ+朝鮮人参の数十グラムを兵15人に分け与えたと言います。

徳川家康の兵糧丸レシピ

・黒大豆:適量
・黒ゴマ:適量
・片栗粉:適量
・砂糖:適量


 こちらは特に分量や作り方が明記されていませんでした。黒大豆を砂糖で煮て餡状にし、片栗粉でプルプルに仕上げたものにすりおろした黒ゴマをかけたのでしょうか。陣中食というか、スイーツや甘味のイメージですね。

 実際に作ってみたら美味しそうですが、戦国時代は砂糖が現代ほど安くなかったそうなので、これを雑兵たちが頬張っていたとは考えにくいでしょう。

甲斐・武田家の兵糧丸レシピ

・米粉:適量
・蕎麦粉:適量
・梅干し:適量
・鰹節:適量
・鰻肉:適量

※『甲州流秘書』より


 特に分量は記されておらず、これらの材料を酒で練ったものを蒸し、天日干ししたと言います。

 こちらは米粉や蕎麦粉が入っていることから、主食として頼もしい味がするでしょうね。梅干しは保存性の向上と食あたり防止、鰹節は香りのよさから食欲増進が期待できそうです。そして特徴的なのが鰻肉(ウナギ)。昔は富士川を遡上してきた鰻がたくさん穫れたのかも知れません。

越後・上杉家の兵糧丸レシピ

・蕎麦粉:適量
・黒大豆:適量
・麻の実:適量

※『上杉家兵法書』より


 これらの材料を ”酒で練って丸める” とありました。蒸したり天日に干したりはしないのでしょうか?あるいは言うまでもないために割愛されている可能性もあります。

 もしかしたら、酒豪で知られる上杉謙信が「アルコールが飛んだらもったいない」とばかり、練ってそのまま頬張ったのかも知れません。黒大豆は畑の肉と呼ばれるほど良質なタンパク源であり、麻の実もミネラルや食物繊維を豊富に含むため、戦陣で効果的な栄養摂取ができたことでしょう。

江戸時代に考案されたレシピ

 戦国乱世が遠く過ぎ去った江戸時代においても、兵糧丸のレシピは考案されました。その利便性は戦場以外でも効果を発揮したのです。

水戸藩の兵糧丸レシピ

・ハチミツ:適量
・氷砂糖:適量
・蕎麦粉:適量

※原南陽『砦草』より


 こちらは完全に蕎麦粉ベースのスイーツ感覚だったのでしょう。ハチミツと氷砂糖のダブル食感と蕎麦粉の香りが、絶妙なハーモニーを生み出してくれそうです。 原南陽は藩医だったので、病人の栄養補給として考案したのでしょう。

尾張藩の兵糧丸レシピ

・もちごめ:適量
・蕎麦粉:適量
・ウズラ:適量(肉?卵?)
・生薬:適量
・朝鮮人参:適量


 こちらも生薬や朝鮮人参が活用されていることから、医療目的だったのかも知れません。ウズラについては肉か卵かわかりませんが、病中の栄養補給であれば卵を溶き入れたものと考えられます。

現代のレシピ

 最後に、21世紀に考案された食文化史研究家の永山久夫が考案した兵糧丸レシピをご紹介。いくつかの文献をベースに、現代人が食べやすい&材料を揃えやすい(作りやすい)よう創意工夫したということです。

【材料】
甲:白玉粉、蕎麦粉、小麦粉、きな粉、すりゴマ(分量はすべて均一)
乙:砂糖、酒(好みで適量)
丙:きな粉(表面にまぶす用)

【作り方】
一、甲乙すべての材料をまぜ、適度に固まるまで練り上げる。
一、生地を団子(直径3~5センチが食べやすい)に丸める。
一、30分ほど蒸しあげ、しっかり火を通す。
一、表面にきな粉をまぶして完成。このまま食べる。
一、1日天日干しすると、保存が利くようになる。


 興味が出た方は、ぜひ作ってみてはいかがでしょうか?

終わりに

 今回は戦国時代の携帯食料「兵糧丸」について紹介してきました。

 ここで紹介された以外に、各家々で食糧事情や経済事情に合わせた独自レシピを考案する者もいたことでしょう。皆さんは、どれを食べてみたいと思いますか?もし実際に作った方がいらっしゃいましたら、ぜひ感想を教えてほしいです!

【参考文献】
※Amazonのアソシエイトとして、戦国ヒストリーは適格販売により収入を得ています。
  この記事を書いた人
鎌倉の最果てに棲む、歴史好きのフリーライター。時代の片隅に息づく人々の営みに強く興味があります。 得意ジャンル:日本史・不動産・民俗学・自動車など。 執筆依頼はお気軽にどうぞ!

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