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浮世絵にも描かれた“日本三大奇橋” JR猿橋駅から猿橋へ

猿橋へ行くには、JR中央本線の猿橋駅が最寄り駅になる。駅名からは名勝・猿橋が目の前にあるような印象だが、実はそうでもない。甲州街道を楽しむ気分で国道20 号線を東に向かって15分程歩いていくと、迷わず猿橋にたどり着くことができる。

日本三奇橋の1つに数えられる猿橋。日本三奇橋のあと2つは、カーブが美しい「錦帯橋」(山口県岩国市)と、中山道の難所であった「木曽の桟」(長野県木曽郡)だという。

猿橋は橋脚をまったく使わず両岸から張り出す四層のはね木によって支える構造で、飛鳥時代に百済からやってきた人物が、猿が重なって繋がり対岸へと渡る姿にヒントを得て架けたと伝えられる木造の橋。現在の猿橋は1984(昭和59)年に復元されたものだ。

江戸時代には、歌川広重の「甲陽猿橋之図」「六十余州名所図会」にも登場する猿橋。天保12年、広重は甲府への旅の途中、猿橋でスケッチと旅日記を残したという。これをもとに描かれた「甲陽猿橋之図」には、大きな満月や馬に乗って橋を渡る人が描かれており、夜の趣と構図の妙がある。

一方、幕末に日本全国の名所を描いた「六十余州名所図会」で再び描かれたのは紅葉の「甲斐さるはし」。切り立った渓谷の下に流れる水と、上に掛かる猿橋。奥に広がる景色や色の対比も大胆な印象だ。

実際に橋の架かる場所に行くと、この木造の猿橋以外に3つの橋があることに気づく。西側から1つめが新猿橋。現在の県道505号線であり、アーチが美しい。2つめが名勝・猿橋。3つめが八ツ沢発電所の第1号水路橋(猿橋水路橋)で、鉄筋コンクリートの橋の中には、なんと水が流れている。1912(明治45)年に造られたこの水路橋は、2005(平成17)年に国の重要文化財に指定されている。そして、その向こうには現在の国道20 号線に架かる新猿橋が見える。素材の異なる4つの「猿橋」には、それぞれに異なる趣がある。

猿橋が奇橋たるゆえんは橋の下にある。はね木を見るためにはまずは橋の横にある階段を下らなければならない。展望台へ行くのもこちらの道だ。

「展望台は上にあるもの」という意識を覆されたような気持ちになりながら少し急な階段を降りると、橋の両側から張り出す4層のはね木が見える。想像していたよりもゴツゴツとした印象だ。展望台の正面にはダイナミックな渓谷美、すぐ後ろには、桂川の中に入り釣りを楽しむ人の姿も見え、緩急対照的な風情が楽しめる。

戦国時代には軍事の要衝でもあった猿橋。東から攻め込み桂川を渡るためには、一旦橋を通り過ぎ石段を下らなければならなかったという。橋の目の前にあるのはかつて国定忠治も逗留した旅館であった大黒屋。眺めと蕎麦で一息つくことができる。


参考
山梨県立博物館ホームページ
http://www.museum.pref.yamanashi.jp/4th_tenjiannai_osusume.htm
国立国会図書館デジタルコレクション 六十余州名所図会 甲斐 さるはし
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1308314
大月市観光協会ホームページ
https://otsuki-kanko.info/category/content-page/view/31

歌川広重「甲陽猿橋之図」(メトロポリタン美術館 所蔵〔パブリックドメイン〕)

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  この記事を書いた人
KOBAYASHI Sayaka さん
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