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富士山にまつわる伝説

 静岡県富士宮市にある富士山本宮浅間大社の祭神は、木花之佐久夜毘売命(このはなさきやひめのみこと)(別称:浅間大神(あさまのおおかみ))。

 「富士本宮浅間社記」にその起源があり、第7代孝霊天皇の御代に富士山が大噴火、周辺住民は離散し荒れ果てた状態が長期に及び、第11代垂仁天皇がこれを憂いてその3年(前27)に浅間大神を山足の地に祀り山霊を鎮めたという。これが富士山を鎮めるため浅間大神を祀った最初であり、全国にある浅間神社の起源にもなっているとされる。

 木花之佐久夜毘売命は、日本神話に登場する木花咲耶姫(このはなさくやひめ)としても知られる。桜が咲くように美しいということを意味する女神で、父は大山津見神(おおやまつみ)、磐長姫(いわながひめ)(『古事記』には石長比売)という姉がいた。姉は岩のように永久に変わらないことを意味する女神だ。

 木花咲耶姫と磐長姫は、天照大神(あまてらすおおみかみ)の孫である邇邇芸命(ににぎのみこと)に嫁ぐものの、醜かった磐長姫だけが返されてしまった。そのことを父の大山津見神が怒ったことから天神の子に寿命というものが生まれたという。

 木花咲耶姫は邇邇芸命の子を一夜にして身ごもるものの、邇邇芸命は自分の子ではないのではないかと疑った。その疑いを晴らすべく「あなたの子でなければ生まれないでしょう」と言い、産屋に入って火を放ったという。

 そして無事に生まれたのが、火が盛んに燃えているときに生まれた火照命(ホデリノミコト:海幸彦)、火が弱くなったときに生まれた須勢理命(ホスセリノミコト)、火が消えかけたときに生まれた火遠理命(ホオリノミコト:山幸彦)。

 この神話から、木花咲耶姫は火の神、火を鎮める神、または安産の神としても祀られている。

 また、富士山には、聖徳太子が甲斐国から献上された黒駒に乗って奈良の都から富士山まで飛んだという「甲斐の黒駒伝説」も残る。推古天皇6年諸国に命じで善馬を献上させたところ、そこに1頭、全身が黒く、4本の脚だけが白い甲斐馬がいたという。これこそ神馬として飼育させ、引き出してきて乗った。すると雲につつまれて、空を飛び、富士山頂に着いたという。

 「福慈」「不二」「不死」「不尽」ともされ、古くから霊山として崇拝の対象であった富士山。「不死の薬を月に最も近い山くように」というかぐや姫の話や、富士山と八ヶ岳の背くらべのほか、遥拝や登拝などを通じて、長く人々に親しまれ信仰されてきた存在であり、人々の想像力をかきたてる神秘的な山だ。


【参考文献】
遠藤秀男『富士山 歴史散歩』羽衣出版

【参考サイト】
富士山本宮浅間神社ホームページ
http://www.fuji-hongu.or.jp/sengen/index.html

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  この記事を書いた人
KOBAYASHI Sayaka さん
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