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元始、女性は戦士であった。戦う女性の歴史

元始、女性は戦士であった。
古代には鎧に身を包んで戦った皇后や、平安の世では女戦士の巴御前が登場します。さらに幕末、坂本龍馬の婚約者・千葉佐那も女性剣士でした。

また、小説の中でも女剣士が活躍します。時代小説の巨匠・池波正太郎の『剣客商売』でも、女剣士の三冬や手裏剣の達人であるお秀などが男顔負けの活躍をしています。

このように、日本の歴史には「戦う女性」が意外に多いのです。

古代の女将軍たち

こちらは中国の歴史ですが、文字を作ったとされる殷の王・武丁(ぶてい)の夫人・婦好(ふこう)は巫女(みこ)であり、自ら軍の指揮をとる将軍でもありました。

このように、古代の東アジアでは巫女が祭祀を行い、軍を動かす権利を持っていました。日本においても、女王卑弥呼が祭祀を行うことで軍を動かし、国を治めていました。

また、神話上の人物ですが、神功皇后は妊娠中にも関わらず、亡くなった夫に変わり全軍の指揮をとり、新羅(しらぎ)に攻め入っています。

実は古代は、女性の社会的な格差が少ない時代だったようです。稲作による農作業は男女の格差が少ないどころか、女性の専門職(米を精米する作業)までありました。

政治においても「里刀自(さととじ)」というポジションを与えられた女性は、地域の指揮や運営を行っていたそうです。

こうした社会背景から、女性が軍を指揮する権利が生まれたのかも知れません。

鎌倉~戦国の女戦士たち

時は流れ平安時代、女性たちの活躍は宮中文化の中で輝きましたが、鎌倉から戦国時代にかけての動乱の時代は、鎧に身を包み、戦場をかける女戦士があらわれます。

巴御前

大河ドラマでも活躍した女武者「巴御前」は、木曽義仲軍で男顔負けの活躍をしたことが伝えられています。

この巴御前、戦闘能力も高いのはもちろん、とても力持ちだったらしく、いたずら心を起こした義仲を馬ごと持ち上げて投げ飛ばした、という伝説も残っています。

「力持ちの女性」というのは、昔から『今昔物語集』などの物語に登場しますので、巴御膳の場合も誇張された話だったのでしょうが、そんな伝承が追加されるほど、当時の人々にとって印象深い女性だったのかもしれません。

鶴姫

瀬戸内の大三島の神官の娘である鶴姫は、自ら鎧をまとい戦いに出たー。そんな伝説を裏付けるように、大山祇神社には胸のふくらみをもつ女性用の鎧が伝わっています。

しかし、鶴姫のものと伝わる鎧は、女性用ではないという説もあります。鶴姫自身も存在があやふやで伝説の粋をでませんが、かつて瀬戸内を舞台に活躍した女武者という物語は、人々の心に強く印象づけられています。

江戸の女戦士たち

江戸時代は戦もなくなり、主君に仕えるといった武家の役目は男性に移行していきました。しかし、だからといって女性たちの戦いが終わったわけではありません。

夫不在の戦闘時に家を守ることが彼女たちの使命であり、その際の全権は女主人に委ねられました。また、主君の奥方を守ることを使命とし、武術を習得する女性「別式女」もいました。

権利においても、女性が家の相続権を持つことも多く、江戸時代の武家の女性は、表に出ることはなくとも、夫とともに家を守る役割を担っていました。

やがて、幕末になると戊辰戦争でも男顔負けの活躍をした女剣士・中野竹子や、スナイパーとして敵を狙った新島八重など、平和な時代を経てなお、女性の戦闘能力は脈々と受け継がれていったのです。

近代の功罪

実は、女性が戦わなくなったのは明治時代からだそうです。明治政府が男性優位の家長制度を重視し、女性の権利は剥奪されていきました。

そんな、男性の添え物のような扱いの時代の中で、女性たちは薙刀の代わりに筆によって社会との戦いを始めます。

留学後、女子教育に尽力し学校を設立した津田梅子、女性の地位向上のために社会と闘った福田栄子など、彼女たちは家や国家ではなく自らと女性たちのために戦いました。

おわりに

戦場で戦うことばかりが戦士ではありません。『女武者の日本史』という本では、巴御前から現代のなでしこジャパンまで、戦う女性たちを「女軍(めいくさ)」と呼んでいます。

私が特に尊敬する女性の戦士たちは、戦後、女性の選挙権獲得、男女雇用機会均等法の成立に携わった名もなき女性たちです。

彼女たちがいなければ、今の女性たちが安心して働くことができなかったでしょうから。

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  この記事を書いた人
日月 さん
古代も戦国も幕末も好きですが、興味深いのは明治以降の歴史です。 現代と違った価値観があるところが面白いです。 女性にまつわる歴史についても興味があります。歴史の影に女あり、ですから。

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