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文豪の黒歴史 (昭和編)心中マニアと意外なマイホームパパ

 昭和の文豪たちは、戦争の恐怖や戦後の社会情勢の不安からか、精神的に不安定で破滅を望む人が多いような気がします。彼らはそうした自らの不安や社会の空気を敏感に感じ取り、心中や殺人を小説の中に落とし込むことで名作を生み出していきました。

 そんな昭和の文豪たちの私生活は、いったいどんなものだったのでしょうか。

言わずと知れた心中マニア・太宰治

 『人間失格』や『走れメロス』など、名作を生み出した太宰治。(だざいおさむ 1901~1948)

 彼は人生において、5回も自殺を試みました。そのうち数回は女性を巻き込んだ心中です。心中のお相手の女性たちは、人生に絶望していたり、太宰を愛していたりと理由はさまざまでした。

 しかし、太宰治にはそうした女性たちをひきつける魅力というか、吸引力のようなものがあったのかもしれません。

 また、心中のほかにも、ひとつのことに執着する太宰のエピソードとして、芥川龍之介への偏愛が知られています。

 芥川賞を取りたくて川端康成に懇願する手紙を何枚も書いたり、ノートに芥川龍之介の名前を書き連ねたりと、一度執着すると思いを遂げるまで諦めない粘着質な性格でした。そしてそのエネルギーは、必ず負の方向へ向かってしまうのです。

 一方で、太宰治はアートが好きだったらしく、同郷の版画家・棟方志功の油絵を購入していました。しかし、豪快な棟方は太宰治と会った時、あまりに太宰の声が小さいので「なにを言っているのかわからない人だ」と思ったとか…。

意外なマイホームパパ・江戸川乱歩

 江戸川乱歩(えどがわらんぽ 1894〜1965)といえば、探偵小説で有名な小説家です。その猟奇的な作風から、乱歩は「暗い部屋でろうそく一本の明かりで小説を書いた」、「猟奇殺人が起こると犯人と疑われた」など、怪しい噂がたてられました。

 乱歩は小説『屋根裏の散歩者』のごとく、実際に屋根裏に上がって探検してみたり、家の押し入れの中に閉じこもっていたりと、実際のエピソードも驚くべきものでした。

 小説の内容が内容だけに、私生活もさぞ乱れているのかと思いきや、乱歩は他の文豪に比べて意外にマイホームパパだったのです。職を転々とする乱歩に付き従い、副業の下宿屋の運営で苦労をかけた奥さんをねぎらうため、温泉旅行に連れて行ったこともあるとか。

 また、家長として弟妹の面倒をみたり、幼い息子とキャッチボールをしたり、母親に内緒でおでんを買ってあげたりなど、家族思いの一面もありました。

 乱歩はおどろおどろしい作品とは真逆で、家ではマイホームパパの一面があったのです。数々の奇行とまじめな家庭生活、そうした二面性を持つところがまた乱歩らしいのかもしれません。

 薄幸を売りにしていたのに、実は放蕩三昧だった石川啄木とは真逆ですね。

まとめ

 昭和の文豪たちは、その作品と同じく自堕落な人生を送った人もいれば、仕事とプライベートを完全に分けて、世間のイメージどおりに振る舞うも人もいて、ひとくちに文豪といっても、さまざまなタイプがいるのだと知りました。

 こうした文豪の意外なエピソードを見つけると、その作品を読んでみたくなります。

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  この記事を書いた人
日月 さん
古代も戦国も幕末も好きですが、興味深いのは明治以降の歴史です。 現代と違った価値観があるところが面白いです。 女性にまつわる歴史についても興味があります。歴史の影に女あり、ですから。

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