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牛若丸と弁慶は本当に五条橋で闘ったのか? 実は五条橋は2つあった

 京都を東西に貫く、開放的なメイン道路なのが五条通。国道1号線と9号線とも繋がり、京都のメインとなる幹線道路になっています。しかし牛若丸と弁慶が闘った五条大橋は、現在の五条通より二筋北を走る松原通りだったことはご存じでしょうか? 実はその松原通りは話題に事欠かないスポットなんですよ。

あの世とこの世

 昔の都人は、鴨川を挟んで東側が霊界・葬送の地となる「あの世」、西側を現世を現す「この世」と考えていたようです。鴨川の中州には法城寺と呼ばれるお寺も置かれ、「大黒さん」と呼ばれて親しまれていました。当時、暴れ川として頻繁に氾濫を繰り返していた鴨川の灌漑工事を、安倍晴明が行ったことで晴明の塚がありました。そのため、陰陽師にとっても重要なスポットになっていたそうです。

 中州を挟んで2つの橋が架かっていて、あの牛若丸と弁慶の対決は、西の橋に描かれているんです。この時鴨川に架けられていた五条橋は、「清水寺の勧進橋」とも呼ばれています。そこを走る五条大路は、清水寺への参詣道になっていました。多くの人々が暮らし、かなり賑わっていた通りでもありました。

2つの五条通

 京の都が荒廃する原因となった応仁の乱(1467~77年)以降、荒れ果てた京都の町は、上京に公家町があり、下京に祇園社の氏子衆が集まっていました。その下京の南の堺として走っていた大通りが五条大路だったのです。

 五条大路沿いの室町にあった藤原俊成屋敷跡には新玉津島神社が鎮座していて、ご利益を受けようと参拝する人が絶えませんでした。神社への参詣道だった五条大路の両側は松林になっていて、いつしか五条松原通りという名将で呼ばれるようになっていたそうです。

 時を経て、豊臣秀吉が荒れ果ててしまっていた京都の復興に着手します。上京と下京の隙間を埋めるようにして、短冊形の町割りを行い御土居で取り囲んだのでした。この時に、五条橋の架け替え工事も行われています。その理由は伏見城や方広寺へのアクセスとして、二筋南にある六条坊門小路から鴨川を渡るのが便利だったからなんです。

 残念なことに、五条橋を架け替えてしまったことで、牛若丸と弁慶が戦った当時の五条橋は消えてしまいました。まあ、当時秀吉が 牛若丸 vs 弁慶の話を知っていたなら、遺構くらいは残してくれたかもですが、そんなことは気にもしていなかったのでしょうね。

 秀吉の復興工事の後、六条坊門小路が五条橋通りになります。そして五条松原通りは松原通りになり、五条橋通りも五条通りになっていったのです。

 このようなわけで、現在の松原通りがかつての五条大路であって、名所旧跡が多く残されているのです。全く違う橋なのですから当然ですが、新しい五条橋には牛若丸と弁慶の名残は見られませんね。

かつての五条大路

 松原通りを西へ向かうと、江戸時代から明治末年まで大丸松原店(大丸百貨店)が建っていた場所にでます。あの新選組の段だら模様の羽織製作を受けた場所と言われています。

 麩屋町にある不動寺は秀吉の因縁があるお寺。秀吉が空海手彫とされる石佛不動明王を気に入り、聚楽第へ持ち込んだ結果、毎夜起こる怪奇な現象を恐れた秀吉は元に戻したといいます。

 昭和30年までは、祇園祭の山鉾巡行は松原通を通っていたんですよ。そして現在でも、稲荷祭の五基の神輿は松原通りを行きます。松原通は、八坂神社と伏見稲荷大社との氏子圏の境になっているんです。

まるで魔界スポット!?

 堺町を南へ下がると、謡曲「鉄輪(かなわ)」の舞台となった鉄輪の井戸跡があり、この場所が「丑の刻参り(うしのこくまり)」発祥の地となっているんですよ。

 夫の浮気に苦しみ、鬼となって夫を呪い殺そうとした元妻が、安倍晴明の呪術の前に屈した場所とも、住んでいた場所とも言われています。現在では悪縁切りの神様として、今でも夜な夜な祈願に来る女性の姿が見られるそうです。まさに松原通の魔界スポットといえますね。

 まだまだ松原通には、名所・旧跡などの見どころがたくさんあります。一度ゆっくりとディープな歴史に浸りに訪れてみてはいかがでしょうか?

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  この記事を書いた人
五百井飛鳥 さん
聖徳太子に縁のある一族の末裔とか。ベトナムのホーチミンに移住して早十数年。現在、愛犬コロンと二人ぼっちライフをエンジョイ中。本業だった建築設計から離れ、現在ライター&ガイド業でなんとか生活中。20年ほど前に男性から女性に移行し、そして今は自分という性別で生きてます。ベトナムに来てから自律神経異常もき ...

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