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【麒麟がくる】第3回「美濃の国」レビューと解説

  • 明智光秀
 2020/02/03
「麒麟がくる」第三回レビュー用

「麒麟がくる」第3回の舞台は、織田信秀との戦いが終わった半年後の美濃国です。美濃とはどういう国なのか。美濃国守護である土岐氏と、守護代・斎藤氏の関係はどのようなものなのか?その実情が描かれました。
(文=東 滋実)

喪に服さない帰蝶

前回、父・道三に夫の命乞いをした帰蝶でしたが、その思いもむなしく、夫の頼純は毒殺されてしまいました。

それから半年。帰蝶は夫の死に納得がいかないまま過ごしていた様子でしたね。

十兵衛(光秀)にわざわざ会いに明智庄を訪れたのも、「頼純の死についてどう思うか」と気の置けない仲である光秀の意見を聞きたかったからでしょう。それも、あまり納得のゆく答えが得られたとは思えませんでしたが……。

帰蝶が納得できないのは、父が頼純を殺してしまったことはもちろんですが、夫の喪に服すことすら許されなかったこともあるのではないかと思います。

通常、夫が亡くなれば落飾(髪を落とす)して仏門に入ったりするものですが、帰蝶は服装からも喪に服しているようには見えません。

帰蝶の意志でそうしている可能性ももちろんありますが、婚家におらず稲葉山城にいるあたり、父・道三の言いつけで喪に服すこともできずにいるのではないか、と思えます。

まあまだ若い(というより幼い)ですから、そのまま尼になるよりも、別の家に輿入れする、というのが普通の流れかもしれませんが。

美濃のきつねの話

明智庄でお牧の方、駒と過ごした帰蝶は、昔お牧の方がよく聞かせてくれたという「きつねの娘が人間の男の妻になった話」をします。

これは京育ちの駒も「火事から救ってくれた美濃のお侍」に聞かされた話だといい、なんだか明智家とのつながりが見えそうな感じ。

さて、この話は昔から美濃に伝わる話です。もっとも古いところでは、日本最古の説話集である『日本霊異記』(※平安時代初期に成立)の上巻に「狐を妻(め)として子を生ましめし縁」という話があります。

昔むかしといっても相当昔。欽明天皇(きんめい/第29代天皇)の時代です。

美濃国の大野の郡の人が、美しい女性を妻にしようと出かけました。男は、同じく「婿を探しに出歩いている」という美しい娘に出会います。男は「それじゃあ私のお嫁になりませんか」といって、娘が承諾したのでふたりは結婚し、やがてひとりの男の子を産みました。

同じころ、飼い犬も子犬を生みました。この子犬はなぜか夫婦を睨みつけ、吠え立てるのです。妻は恐ろしがり、「犬を打ち殺してください」と頼みますが、夫は犬がかわいそうで殺せずにいました。

それからしばらく経ったある日、親犬が妻に噛みつこうとして、吠えました。すると妻は怯え、狐の姿になって逃げだしたのです。

夫は妻の正体を知っても、「子どもまである仲だから、お前を忘れたりしない」と言い、妻を待ちました。妻も夫の心を知って、時々帰ってきては泊まっていくのでした。

この、来ては寝て帰る妻こそ、「来つ寝」つまり「きつね」の語源といわれるのです。

話にはまだ続きがあって、二人の間に生まれた子は「岐都禰(きつね)」と名付けられ、すごい力持ちの子になりました。

人間と動物の異類婚姻譚はよくある話型ですね。狐女房については、安倍晴明の母とされる葛の派狐の「信太妻」も有名です。

また、美濃で狐の母から生まれた子の、そのさらに子孫の話も『日本霊異記』(中巻「力ある女の、力比べを試みし縁」)にあります。四代目の子孫もまた力持ちの娘「美濃狐/三野狐」といって、尾張の小柄な女に鞭で打たれて追放された、という話です。

美濃の女が尾張の女に力で敗北するという続編は、なんとなく「麒麟がくる」の今後の美濃と尾張の関係を予感させるものでもありますが、はたしてそこまで意図されているのか……。気になるところです。

土岐頼芸の苦悩

頼純が亡くなったので、次の美濃国守護を立てなければなりません。そのために道三は義龍を連れて土岐頼芸の元を訪れます。頼芸は事実上、道三に隠居させられたわけですから、関係がいいはずがありません。

鷹の絵を得意にしたという土岐頼芸のイラスト
多くの書画を書き残し、特に鷹の絵が得意だったことで知られる土岐頼芸。

鷹を描く頼芸は、「苦である」と言います。土岐家は祖父・成頼の代から鷹をよく描き、父・政房も描いています。

「祖父や父のように巧みに描けるか、そう思うと苦なのだ」と言いますが、これはきっと別のことを暗示しているのでしょう。土岐氏の名声です。祖父や父のころはよかった。それが今はどうか?守護・土岐氏は新参の斎藤道三に追いやられています。

「鷹を描くのが苦である」というのは、祖父や父の時代のように土岐氏がうまくいっていないことが「苦」なのであり、また今は無理やり隠居させられて鷹を描くくらいしかすることがないのが「苦」なのでしょう。

頼芸は義龍に「お前の本当の父親は俺だぜ」と暗にちらつかせながら、父がだめなら息子を操ろうと考えます。

おかげで義龍はその気になっていますが、頼芸は他方では、ふたたび織田信秀を動かして今度こそ道三を引きずり降ろそうと考えるのです。

土岐頼芸の計画は、今川氏の三河侵攻で潰える?

信秀のほうも、負けたままでは癪だ、とやる気十分。ところが、駿河の今川義元が尾張の隣国・三河へ侵攻しているとの情報が入ります。

次回は、三河を攻める今川義元と、三河を守ろうとする織田信秀の戦い「小豆坂の戦い」です。これには三河を本拠地とする松平広忠(家康の父)も関わりますし、もちろん家康(竹千代)も、情勢に振り回されます。

このころ竹千代は尾張織田氏の人質として過ごし、信長とも知り合っていたとい説がありますが、「麒麟がくる」ではこのあたりの関係性はどのように描かれるのか、気になりますね。

次回放送に向けての要チェック記事は以下3本です。ぜひご参照のほど、よろしくお願いいたします!

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【参考文献】
  • 校注・訳:中田祝夫『新編日本古典文学全集10 日本霊異記』(小学館、1995年)


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