【べらぼう】意外と大変だった!?大奥で将軍の御成りがあるまでの入念なチェックとは

 大河ドラマ「べらぼう」第35回は「間違凧文武二道」。

 江戸城には男子禁制の大奥があったことはよく知られています。「べらぼう」では吉原遊廓のみならず、大奥での人間模様も描かれることもあります。大奥には将軍の正室(御台)、側室、侍女、奥女中ほか多くの女性が住んでいました(諸説ありますが、約2千人もの女性が大奥で働いていたとされます)。将軍が大奥に泊まることを奥泊りと言います。将軍は正室もしくは側室と寝を共にするのです。

 「べらぼう」において悪役的存在である一橋治済(演・生田斗真)の長男は江戸幕府11代将軍・徳川家斉。家斉の側室は40人はいたとされ、彼の子女は55人にものぼりました。家斉の事例だけ見ると将軍は奔放な性生活を営んでいたように思われますが、意外とそうではありません。歴代将軍や近親者の命日など精進潔斎しなければいけない日は、前夜には女性を近付けることはできません。

 さて、将軍の側室は中臈(幕府の奥向きに仕えた女中)から選ばれるのが一般的でした。将軍は気に入った中臈がいると昼の間にその名を年寄(老女。奥向を差配する女性)に告げておきます。将軍の御伽をすることになった中臈はそれからが大変です。風呂で身体を清めることになるのですが、糠袋10個ほどで身体を隅から隅まで洗われるのでした(女中2人がかりでの作業でした)。

 身体を洗った後は入念にお化粧。将軍が到着する1時間ほど前には小座敷に向かいます。そこには年寄の姿がありました。年寄は中臈の髪をほどき、色々と調べることになります。凶器などがないかのチェックをするのです。それが終わると髪を櫛巻きに結い直し、小座敷にて将軍の御成りを待つのです。こうして見ていくと将軍の御成り以前の準備が結構大変であることが分かります。もちろん将軍に何かあっては一大事ですから、入念なチェックをするのは当然と言えば当然ですが・・・。


【主要参考文献】
  • 安西篤子監修『江戸城大奥100話』(立風書房、1989年)

  • ※この掲載記事に関して、誤字脱字等の修正依頼、ご指摘などがありましたらこちらよりご連絡をお願いいたします。
  • ※Amazonのアソシエイトとして、戦国ヒストリーは適格販売により収入を得ています。
  この記事を書いた人
濱田浩一郎 さん
はまだ・こういちろう。歴史学者、作家、評論家。1983年大阪生まれ、兵庫県相生市出身。2006年皇學館大学文学部卒業、2011年皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。専門は日本中世史。 武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー、日本文藝家協会会員。兵庫県立大 ...

コメント欄

  • この記事に関するご感想、ご意見、ウンチク等をお寄せください。