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京都知恩院に伝わる七不思議

 京都・東山三十六峰の一つ、華頂山のふもとに広がっているのが、大小数多くの伽藍を有している浄土宗総本山知恩院です。厳粛な中にもおおらかな雰囲気が漂う寺院で、その壮大な佇まいは参拝者を優しく包み込んでくれます。

鴬張りの廊下

 御影堂から伸びる廊下は、集会堂・大方丈・小方丈へと続いていて、その長さはなんと550m。廊下を歩くと「キュッキュッ」っという音がして、鶯の鳴き声のような音が聞こえてきます。

 音が気になって静かに歩こうとすると、更なる音が出てくるので「忍び返し」ともいわれているんですよ。鴬張りの廊下は、曲者が忍び込んだことが察知できる警報装置だったんです。また聞こえてくる鶯の鳴き声が、法(ホー)聞けよ(ケキョ)とも聞こえるので、仏様の法が聞こえてくるのだといわれています。

白木の棺

 知恩院の三門楼上には、二つの白木の棺が安置されています。実は、棺の中に納められているのは、遺体ではなく、木像なんです。

 五味金右衛門は、三門造営を命じられた造営奉行で、立派な門が出来上がるよう祈念してご夫婦で木像を掘ったのでした。そして見事に三門は完成。しかし、工事の予算が超過したということで、なんと夫妻は責任を取って自刃したと伝わっています。五味金右衛門夫婦の菩提を弔うため、木像を白木の棺に納め、現在の場所に安置したのです。

忘れ傘

 御影堂の正面に出張っている軒裏をよく見ると、骨ばかりになってしまった傘を見ることができます。

 世間にその名が知れ渡っていた名工、左甚五郎が魔除けを目的にして置いていったとされる傘。そしてもう一つの説が、知恩院第32世の雄誉霊巌上人と白狐のお話。この御影堂が建立されると棲居がなくなってしまう白狐が、御影堂を建てる代わりに、新しい棲居を確保してほしいと霊巌上人に懇願します。それが叶えられた白狐は、水と関係のある傘を置いて知恩院を火災から守ったのでした。

 しかし実際のところは、左甚五郎が単純に忘れていった傘なのではないでしょうか。こういうと身もふたもありませんが、でも人間らしくていいですよね。

抜け雀

 抜け雀は襖絵のことで、大方丈にある菊の間で見学ができます。この名画は狩野信政が描いたものです。紅白の菊の上に、数羽の雀が描かれていました。しかしあまりに上手だったため、絵の中の雀は生命を受けて飛び去ってしまったのだといわれています。

 現存している大方丈の襖絵には、すでに雀が飛び去った後の絵しか残っていません。狩野信政の絵が素晴らしかったことを示す逸話なのでしょう。

三方正面真向の猫

 もう一つは、狩野信政に関するお話です。

 方丈の廊下にある杉戸、ここにも狩野信政が描いた絵があります。杉戸には猫が描かれているのですが、実はこの猫は三方正面真向といって、どの位置から猫を見ても猫は見る人を正面にしてにらんでいるのです。親猫が子猫を愛する親子愛が見事に描かれていますね。親が子を思う心、仏様はいつでもどこでも私たちを見守っているという慈悲をあらわしているそうです。

大杓子

 大方丈入口の廊下の上には、梁に架けられた大きな杓子があります。長さ2.5m・重さ約30kgという大杓子、これほど大きい杓子を見ることはめったにないので、拝観の皆さんも注目しています。

 伝説では真田十勇士の一人である三好清海入道が、この大杓子を持って大坂夏の陣で活躍したのだとか。そして、兵士の御飯を「すくい」振る舞ったそうです。「すくう」ということから、全ての人々を救いとるとされ、知恩院に置かれています。阿弥陀様の慈悲深さが感じられますね。

瓜生石

 知恩院に向かう途中に建つのが黒門。その黒門へ登る路上で、大きな石を見られるのですが、それが瓜生石です。知恩院が建立される前からあったとされ、現在周囲に石柵が張られています。

 この石に伝わるのは、誰も植えていないのに瓜のつるが伸びて、花が咲いた上に実が成ったというお話。それと、瓜生山に降臨した八坂神社の牛頭天王が、その後再びこの石に現われ、一夜のうちに瓜が生え実ったという話も伝えられているんです。

 また石を掘ると、二条城まで続く抜け道があるとか、隕石が落ちた場所だとか、都市伝説的なものも含めいろんな話が伝わる不思議な石なんですよ。

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  この記事を書いた人
五百井飛鳥 さん
聖徳太子に縁のある一族の末裔とか。ベトナムのホーチミンに移住して早十数年。現在、愛犬コロンと二人ぼっちライフをエンジョイ中。本業だった建築設計から離れ、現在ライター&ガイド業でなんとか生活中。20年ほど前に男性から女性に移行し、そして今は自分という性別で生きてます。ベトナムに来てから自律神経異常もき ...

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