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【やさしい歴史用語解説】「土偶」
- 2023/04/17
今回はあまり触れられることのない縄文文化の「土偶」のお話です。文字も無ければ記録する媒体すらない時代ですから、残された遺物をもとに当時の生活や習慣を推し量るしかありません。だけど想像を膨らませることで縄文人に思いを馳せるのも、何だかロマンがあると思いませんか?
縄文文化を代表する遺物の「土偶」は、古墳時代に登場する「埴輪」とよく似ていますが、比較するとかなり違うことがわかります。
まず、埴輪は人間だけでなく動物や道具などを象っていますが、土偶の場合はほぼ人間をデフォルメしたものです。また、埴輪が死者の魂を鎮めたり慰めるのに対して、どうやら土偶は呪術的な目的で作られたのでは?とされています。
縄文時代はとてつもなく長いですから、土偶もまた何千年という期間を通じて作られてきました。もっとも初期の土偶は紀元前1万年以上前に製作され、かろうじて人形と判断できる板状の扁平なものです。
やがて時代を経て製作技術の向上が図られ、縄文時代後期になると、遮光式土偶に代表される精巧なものが作られるようになりました。
さて、どのような目的で土偶が作られたのでしょうか? そこには多くの謎がありますが、そこは想像をたくましくしてみましょう。
まず土偶の大きな特徴としては3点あります。
- 女性を象ったものが多数を占めること
- 顔の表情がわからず、おおざっぱに作られていること
- 完全な形で出土することはほとんどなく、壊された状態で見つかっていること
ここから導き出される説を見ていきましょう。
まず「再生信仰説」です。
人間や動植物などあらゆるものが自然界から生まれると信仰したシャーマニズムに基づき、その再生を願って女性像を破壊し、自然にばら撒くというもの。また、土偶を女性として象ったのは、女性は命を生む存在という死生観によるものでしょうか。
そしてもう一つは「憑代(よりしろ)説」です。
人を象った紙にケガレや厄を移すヒトガタが知られていますが、縄文時代からそのような考えがあったというもの。神や精霊をこの世に呼び出すため、憑代として土偶を用意して儀式をおこない、最終的に儀式を終えるために土偶を壊したのでは?という説ですね。
この他にも「子供のおもちゃ説」「医療用具説」などもあって、なかなか面白いところです。
また、土偶はユーモラスな形状をしているケースもあり、博物館などで見かけると思わずほっこりとしそうです。有名なものとして「縄文のビーナス」や「ハート形土偶」などが知られていますね。
どのような思いで作られ、どのように使われたのか?はっきりわからないところに魅力があるのかも知れません。日本各地で2万点もの土偶が出土しているそうなので、考古学博物館でお目にかかる機会は多いのではないでしょうか。
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