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四天王寺には聖徳太子の残した「未来記」があるって本当?
- 2023/08/21
未来記の存在について、今わかっていることをまとめてみました。
聖徳太子が預言者というのはどこから?
『日本書紀』の中には、聖徳太子に関する記述が複数あります。その中のひとつに、「兼知未然(かねて未然を知ろしめす、かねて未だ然らざるを知ろしめす)」という文言が存在します。現代風に解釈すると、聖徳太子は「まだ実現していないことを知っていた」ということ。つまり未来予知の能力がある予言者だったというものです。
日本書紀には真実だけでなく、少々大げさに物事を描いた部分やフィクションも存在すると今では解釈されていますが、それでも当時の日本を知るには大切な資料。その中にそういった記述があればもちろん「もしかして本当なのでは?」と思うこともあるかもしれません。
そしてその聖徳太子の予言を記したというのが「未来記」、そして「未然本紀」という書物だといいます。一時は「未然本記」が、「未来記」の写本であると話題になったこともあるそうですが、全くの別物と考えられるのが通説であるといいます。しかしこちらは解釈の問題でもあると考えられており、真実はわかっていません。
未然本記
聖徳太子によって編纂されたと伝えられる教典が、未然本記です。未然本記は江戸時代に発売禁止になったこともあり、実は現在でも写本が残っています。しかし現在では「偽書」と判断されているそう。真実はわかりませんが、興味があるという方は見てみてはいかがでしょうか。未来記
未来記は現在実在する書物とされているものではありません。しかし、かつて存在していたのでは、と思われる記録がいくつも残っています。有名書物からいくつか紹介します。
明月記
「明月記」は藤原定家の日記。この中に、「瑪瑙(めのう)の石箱に聖徳太子の未来記が刻まれていた」という記述が残っているそうです。しかし、書物ではなく石箱に刻まれていた、というのは少しスタイルが異なるようですね。ちなみにここには承久の乱の勃発が予言されていたそうです。
平家物語
「平家物語」は有名なのでご存知の方も多いはずです。実はこの中にも未来記のことが書かれていました。「聖徳太子の未来記にも、けふの事こそゆかしけれ」という記述があるそう。これは「平氏が滅亡したという出来事を聖徳太子は未来記にどう書いているのだろう…」と想像している様子。この時代未来記の存在は信じられていた、と思わせる書き方ですね。吉口伝
吉田隆長という貴族が、その兄・定房の談話を記した「吉口伝」という書物にも未来記のことが書いてあるそう。しかしどういうスタイルのものかははっきりしておらず、書物だけでなく彫られたものもあると記述されていて、複数存在するともとらえられるようです。太平記
太平記は南北朝時代を描いた軍記物語。こちらも真実とフィクションが混ざりあっていますが、40巻にも及ぶ歴史的資料です。後に誤りや解釈の違いなど指摘されている部分はありますが、当時の歴史の流れを知るにあたって欠かせない資料のひとつです。その太平記にも、未来記に関する記述があります。
太平記の巻六には「正成天王寺未来記披見事」(楠木正成が未来記を見た)という具体的な記述があり、四天王寺の老僧に馬や太刀などを奉納してお願いして見せてもらったそう。
そこにあったこちらの文言
「人王九十五代に当たって、天下一たび乱れて、主安からず。
この時 東魚(とうぎょ)来たりて、四海を呑む。
日、西天に没すること三百七十余箇日、西鳥(せいてう)来たりて、東魚を食す。
その後、海内(かいだい)一に帰すること三年。
獼猴(みこう)の 如き者、天下を掠すむること三十余年。
大凶変じて一元に帰す。云云(うんぬん)」
という部分を、楠木正成は「後醍醐天皇が鎌倉幕府を倒すこと」であると解釈したと言われています。
後の歴史を知っている私たちからすると逆(足利尊氏が南北にわかれていた政治をひとつにまとめる)ともとれる内容です。未来記の内容も読む人の解釈次第で内容が変わるようにされているのかもしれません。
未来記は本当に四天王寺にある?
ご紹介した「太平記」にははっきり大阪の四天王寺で未来記をみたという記述があります。しかし他の書物にはそもそも書物ではなかったり、発見された時の描写があったりとその存在は謎です。もちろん現在四天王寺に未来記があるという事実もないようです。しかし四天王寺は聖徳太子が建立したことでも知られているゆかりのある寺。もしかしたらどこかに隠されているかも?と思っている人はいるかもしれません。
未来記がなくても、当時の建築を再現した伽藍など境内は見ごたえがたっぷりです。当時に思いを馳せながら見学してみるのもおすすめです。
未来記の存在は謎のまま
聖徳太子は一度に複数の人の話を聞くことができたなど様々な超人的なエピソードが残っているので、未来予知の能力があってもおかしくないかも…と思う人もいるかもしれませんね。未来記の存在にも大いに興味がわく気持ちもわかります。もし今後どこかから発見されると大発見になりそうですが、未来記は実在するかどうかもわかりません。後世の人の創作だという説もありますが、未来記は聖徳太子という存在がずっと人々に信頼され、信仰すらされてきたということを表しているのかもしれません。
【参考資料】
人間文化研究機構 国文学研究資料館webサイト
「日本書紀」国立国会図書館デジタルコレクション
「太平記」国立国会図書館デジタルコレクション
「明月記」藤原定家 国立国会図書館デジタルコレクション
「聖徳太子に秘められた古寺・伝説の謎 正史に隠れた実像と信仰を探る」瀧音能之
「聖徳太子の「未来記」とイルミナティ」中山 市朗
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