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「日本の下層社会 2023」 貧困女子の構図

 令和3年に国税庁が行った民間給与実態調査によると、男性の平均年収は545万円、女性は302万円となっています。数字で書くのは簡単ですが、実際に、その差の243万円の札束を想像すると「いかに女性が低賃金で働かされているか」が理解できます。

 なぜ男女間で賃金に差が出てしまうのか、というと、雇う側にとって女性は「結婚したら辞めてしまう可能性がある。だから育成しても意味がない」「管理する側として女性に残業や徹夜作業を命じるのは抵抗がある」「生理休暇を与えざるを得ない」「仕事を続けてくれたとしても子供が出来たら無理は言えなくなる」など、要するに、男性社員のように無理が言えないというのが理由となっているようです。

 よく、弱い者の代名詞として「女、子供」という表現がありますが、男性社会ならではの言い方と言えるでしょう。スーパーのレジ係や水産加工の工場などではパートの女性従業員が多く、「雇用の調節弁」などという言い方がされていることもご存じかと思います。景気悪化に伴って会社の業績が悪化したら、人件費削減として解雇しやすいパートやアルバイトなどの非正規従業員は都合が良く、そんな言い方をされる訳です。

 つまり、現代の日本社会は女性が仕事で自立するには「不都合な社会」になっているのです。しかも女性は男性に比べ、非常に理不尽な社会現象が存在します。それは「美醜の差で扱いに差が出る」という点です。決して社会的に恵まれていない男性はよく「女はいいよなぁ。困ったら結婚して養ってもらう、という手があるし、最悪の場合、風俗に行く、という手もあるもんなぁ」などと言います。しかし、それは「ある程度、容姿に恵まれた女性」の場合であり、そうでない女性は風俗店に就職しようとしても面接で「整形してから出直してきな」と言われてしまう現実を知らないから言える言葉なのです。

 ここまで言えばお分かりでしょうか。実は2023年の現代日本における「最貧困層」は「恵まれない女子」なのです。その中でも特に「保護者のいない未成年女子」と「シングルマザー」という存在が、その最下層と言っても良いのです。そして、そこには必ずといって良いくらい「あまりにも身勝手すぎる男性の存在」があるのです。その内情を述べてみましょう。

虐待、家出…保護者のいない未成年女子

 TVでよく児童虐待のニュースが報じられます。再婚した母親の連れ子が継父に虐待される、或いは母親の愛人に虐待される、と言うケースが目立ちますが、実の母親からも虐待を受けるケースもあります。虐待を受ける子供が、まだ10歳未満の幼児である場合は、その虐待から自力で避難することはできません。ですので「虐待の結果、遂には殺してしまう」ケースは幼児に限られます。

 では幼児ではなく、子供が小学生高学年以上である場合はどうでしょうか? 多くの場合は「家出」という選択肢になります。家出したら一体どこへ行くのでしょう? もし親しい親類(祖父母、叔父、叔母)でもいれば、そこに行くことが出来ますが、虐待をするような両親は親類と疎遠であることも多いため、その家出女子は親類の居場所すら知らないことがほとんどなのです。

 もし、そんな子があなたの家に飛び込んできたら、どうしますか? おそらく大抵の人は警察に連絡するでしょう。警察は「民事不介入」が原則ですので、こういったケースでは結果的に児童相談所に連絡がいくことになり、そこの係員がやってくることになります。

 現在の児童相談所では「親の元に返し、問題解決を模索する」というのが基本原則なので、その子は両親の元に返され、とりあえずは両親も交えて実情確認となります。そうした状況では、両親も「その場を納めるため」になんとでも言います。そしてその言葉を聞いた係員は「では、よろしく」といって去ってしまうのです。係員が帰った後、より一層虐待が激しくなるのは言うまでもありません。

 実はこういった経験から、その子は「役人や警察はあてにならない」という経験を学びます。そして激しくなった虐待から逃げ出すべく、再度、家出をすることになるのです。

家出がきっかけでセックス産業へ

 しかし家出をしても行く先はありません。仕方なく繁華街を歩いていると、声をかけて来る大人がいます。その多くは「スカウト」と呼ばれる人達です。

 スカウトの最終目的は、その女子をセックス産業に引きずり込むことですが、彼らは「家出女子」を見分ける嗅覚のようなものを持っており(なぜなら、かつて自分もそうだったから)巧妙に誘いをかけます。今、その子が最も欲している物である「安心して寝られる居場所」を提供する、と言い、実際にそれを提供します。食事や飲み物、若干の金銭や携帯電話(プリペイド式)も提供してくれます。

 こうして家出女子は、とにもかくにも居場所を得ることができる訳です。生活に必要な健康保険証、住民票、などは頼めば偽造品を作ってくれる所がありますが、性別だけ合っていればスカウトの健康保険証で病院に行くことも可能です。

 ここでお断りしておきますが、これは作り話ではありません。セックス産業で働く女性の多くが辿ってきた道なのです。実は10代のうちは、”10代である” というだけで売り物になるのです。いわゆる「ロリコン族」という男どもがおり、彼らがお金を払ってくれるからです。

 ここで、その女子は抵抗しないのかというと、実は小学校高年齢以上の女子の場合、家での虐待の中に性的な虐待が行われていることも多く、その子にとっては「セックスは既知のもの」であることも多いのです。

 「家に帰らなくても良いなら何でもやる」という気持ちもあります。またスカウトした大人も実は「元は家出少年、家出少女」というケースが多く、その女子と同じような境遇で育ってきた、ということも多いので「その子の気持ちが理解できる」のです。その結果、スカウトとその女子がペアになって売春商売を始めることもあるのだそうです。

 本来、スカウトはソープランド、デリバリーヘルスやアダルトビデオ制作などのセックス産業を営む会社の従業員と言う立場ですが、会社に知らせなければ「家出女子を一人スカウトした」ことは分かりません。また、そうした方が高収入になるのだそうです。ですので、中には最初から会社には関係なく「自分でデリバリーヘルス業を始めよう」と考え、商売になる女子をスカウトしている場合もあるそうです。

 ここで一応、デリバリーヘルスという商売について説明しておきますと、近年、ソープランドなどの風俗店は減少傾向にあります。何故なら実店舗を構えると、それだけで金がかかりますし警察や反社会組織等にも目を付けられやすいからです。

 そこで電話やメールで客からの注文を取り、指定の場所まで女性を送り売春をさせるのがデリバリーヘルスです。これなら実店舗を持たなくても良いし常時、客の相手をする女性を準備しておく必要もありません。その日時に都合の良い女性を車で送り迎えするだけで良いので、楽で余計な経費がかからない分、儲けも大きいのです。

 まだローティーンの女子は潤滑ジェルの入ったステッィクとキシロカインという、塗ることで効果がある局所麻酔剤を用意して、客のところに送られます。家に帰らなくても良いのなら、むしろ、こちらを選ぶのです。

 しかし一旦セックス産業に身を投じると、学校時代の友人や親類縁者には、もう連絡は取れません。また、違法行為をしている訳ですから警察をはじめとする行政を忌嫌います。元々、警察や児童相談所の係員にはひどい目にあっているのですから。

ホームレス女性の背景…やがて待ち受ける残酷な選別

 しかし、その状態をいつまでも続けられる訳ではありません。家出した時は14歳だった少女も5~6年も経てば、もう大人だからです。ここで残酷な選別が行われます。ある程度、容姿の優れた女性は顧客と結婚できることもありますし、風俗店でも雇ってくれます。しかし、そうでない子は行き場をなくしてしまうのです。

 「頭の良い子」は今度は自分が仕切る側に回り、スカウトになって自前の売春グループを作ることもありますが、それが出来る子は限られています。つまり、容姿が優れず、才覚も無い女子は年をとった分、単価を下げて売春商売を続けるしかないのです。こういった高年齢の売春婦は通称「立ん坊」と呼ばれ、終電が過ぎた頃に町中で客を探します。50歳を過ぎても「立ん坊」をする人もいます。他に生計を立てる道が無いのです。

 多くのセックス産業では上限は30台前半までで、それを過ぎた女性はもう ”用なし” なのです。ですので「立ん坊」をするしか残された道はありません。それでも客が取れるうちは良いのですが、そのうちに「全く客が取れなくなる」とアパートの家賃も払えなくなり、ホームレスにならざるを得ません。

 ホームレスの中でも女性に特化した調査では「最終学歴が中学校以下」「平均年齢が59歳」という結果になるワケは、以上のような事情が背景にあるからと見て良いでしょう。また、サンプル数が少ないのですがホームレス女性の半数が結婚歴無し、あるいは逆に複数回以上の結婚歴がある、というのが残りの半数である、という事実もあります。

 小学校高学年~中学在学中で家出してしまうので、当然学歴はありません。義務教育を終えていないケースも多いのです。従って通常の就職はほぼ無理なのです。かといって、正式な住民票も無いので生活保護を受けることもできません。

母親が再婚相手に「ダメ男」選んでしまうワケ

 こんな状態に陥ってしまう、きっかけの多くは「大人の男性の身勝手な行動」ですが、当然ながら、全ての男性がそのような行為をする訳ではありません。つまりそういう男性は ”心底ダメ男” なのですが、なぜ少女の母親はそんな男を愛人にしたり、再婚相手に選んでしまったりするのでしょうか?

 母親がそんな男を選ばなければ、こんな悲劇は起きないのです。実は、ここでも残酷な選別が行われているのです。容姿の優れた女性は、いくらでも良い相手を見つけられます。となると、残された女性は「残された男性」から相手を選ぶしかありません。そして、その選択範囲は「容姿、性格が劣る」ほど狭くなるのです。つまり、ダメ男しか選択肢が無いので、こんな悲劇が起きてしまう、という傾向があることは否めません。

 ならば結婚したり愛人にしなければ良いではないか、 と思われるかもしれません。しかし、どんな人でも孤独は辛いものなのです。まして次章で述べますが、子供を持つ女性が男性社会の中で生活を維持するのは非常に難しく困難なことである、という背景もあるのです。

日本の離婚事情

 日本の離婚件数は欧米諸国に比較すれば低い割合です。それでも令和元年には20万8496組の夫婦が離婚をしています。

 日本では離婚するにあたり協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4種類の離婚の仕方があるのですが、協議離婚が一番簡単で右にいくほど手続きが難しくなり、費用もかかります。ですので、ほとんどが協議離婚という形になります。

 離婚理由として挙げられるものは男女で違うのですが、以下のようになっています。

<男性側>
一位、性格の不一致
二位、異性関係(妻の浮気)
三位、精神的に虐待する

<女性側>
一位、性格の不一致
二位、暴力をふるう
三位、生活費を渡さない

 この中には、いわゆる熟年離婚なども含まれますし、子供がいない夫婦も含まれますので「まだ養育しなければならない子供がいる夫婦」の離婚は年間で10万組前後と推定されますが「まだ養育しなければならない子供」がいる場合、いわゆる「親権」を夫、妻のどちらかが持つかを決めねばなりません。

 そして日本では妻が親権者になる割合は80%と非常に高くなっています。この傾向は先進国全体で見ても同じ程度です。子供にとっては父親より母親の方が重要だ、ということでしょう。

シングルマザーの実情1:求職がままならない

 しかし冒頭でも申し上げた通り、現代の日本社会では女性が自立して働き、生計を立てるのは簡単なことではないのです。よくパート・アルバイトの募集誌があり、そこには沢山の求人募集が載っていますが、子持ちのシングルマザーだとわかると、実に求人募集の90%以上から断られてしまうのです。

 その理由は女性の中でも「シングルマザー」は、雇う側からすれば、最も無理を言えないからなのです。「子供が熱を出したから休まさせて欲しい」と言われたら休みを認めざるを得ません。もし、その仕事がシフト制であれば管理者は急いで代わりの要員を手配しなければならないのです。

 また、子供を託児所に預けている場合には、「託児所の預かり時間」というものがあり、それまでに子供を引き取らなければならないので時間制限もあります。それは、急な用事があっても残業を頼めないということを意味します。

 雇う側はこれまでの経験から「シングルマザー、特に就学前の子供を持った人は使いにくい」ということを知っているのです。しかし就学前の子供であっても「祖父母が健在で預かってくれる」「親しいママ友が預かってくれる」というケースもあります。こういうケースは非常に恵まれたケースでシングルマザー全体の半分以下というのが現実です。

シングルマザーの実情2:偏見の目で見られる

 ここでママ友の問題を少し突っ込んでみますと、男性には理解できないことなのですが、女性には「女性社会」ともいうべき一種のグループが存在します。それは「同じような考え方」を持つ人が自然にグループ化するのですが、ママ友もこういった「女性社会の中のグループのひとつ」なのです。そして今も昔も問題になっている「いじめ」の問題は、女性に限って言うと「どこのグループにも所属できない孤立した女子」で「特にこれといった取り柄も無い」と周りからみなされてしまう女子に集中するのです。

 日本ではシングルマザーになる女性の50%は「自分自身もシングルマザーの家庭で育った女性」であり、シングルマザーの子供というのは学校では、それだけで偏見の目で見られてしまうのです。つまり母親も「偏見の目」の中で育ってきた結果、どこのグループにも入れず、女性社会におけるルールを知らずに育ち「女性の友人」を持つ経験も持たずに成人する結果、ママ友はいない、というのがほとんどなのです。

 「同性の友人」を持ったことがなく、逆に同性からいじめを受けることもあった経験から、むしろ女性の友人は「危険な存在」と考えるシングルマザーも多いのです。また、離婚するまでは正常な関係であっても、離婚してシングルマザーになった瞬間から、がらっと態度が変わり、偏見の目でみられグループから追い出されてしまう、ということもあります。

 なぜ、シングルマザーにこのような偏見が付きまとうのでしょうか? その理由は簡単に言うと以下のような考え方をされるからです。

「結婚相手を誰にするかを決めるのも、子供を産むかどうか決めるのも全部、自分の責任でしょ? なら自業自得じゃない。」

 男性は「一応、納得ができないわけでもないけど…」と思われるかもしれません。しかし実は、この考え方はもっと根深い所に根ざしています。多くの男性は認めたがりませんが、実は「誰と結婚するか」を決めているのは実質的には女性側なのです。人間以外でも多くの生物は「メスがオスを選ぶ」という求愛形式になっていますが、これは生物の持つ「少しでも良い遺伝子を子に伝えたい」という種の存続の本能によるものです。そして人間も例外では無いのです。

 こうした実態から、先の「自分の責任でしょ?」という言葉は、女性の持つ本能的なものからすれば当然の結論とも言えるので「反論の余地無し」なのです。この辺りの感覚は「決して男性には理解できない」もののようで、女性特有と言って良いでしょう。

シングルマザーの事情3:親・知人・元旦那など…みんな頼れない

 シングルマザーにとって唯一頼れるのは「祖父母」、要は自分の両親です。ですが、先に申し上げました通り、シングルマザーになる母親の実に50%が「自分もシングルマザーの家庭で育った」のです。従って両親がいるケースは半分以下になることになり、かつ離婚した娘の実家帰りを認めてくれる親とそうでない親がいます。

 特に「結婚自体に両親が反対していた」というケースでは、ここでも「自分で決めた事なんだから自分で責任をとりなさい」といって受け入れてくれないケース、既に父親が要介護状態で受け入れようがないケースなど、実家には帰れない事情があることも多いのです。

 要は「同世代の友人、知人は頼れない」「親にも頼れない」というシングルマザーが非常に多いのです。その結果、自分が働くしかないのですが、それには子供を託児所などに預ける必要があります。そして安い給料では託児料の方が高くついてしまい、働いても赤字という負のスパイラルに陥ってしまうことも多くなります。

 しかし「負のスパイラルに陥っている」と分かっていても、やっと見つけた仕事を簡単に辞めることはできません。辞めたら収入は0円になり、アパート代も払えなくなるからです。

シングルマザーの事情4:大抵は慰謝料や養育費も皆無

 ここまで書くと、読者の皆さんの中には「元旦那から養育費は取れないのか?」「慰謝料は?」という疑問が出ると思います。実はシングルマザーの中で養育費や慰謝料を受け取っているケースは「ほぼ皆無」なのです。

 冒頭に離婚の形式として4つを挙げましたが、日本ではほとんどが「協議離婚」です。そしてここで一応、養育費などの取り決めもなされるのですが、現実には全く守られていないのです。

 原因はそもそも男側にそれだけの経済能力がないこともありますが、協議離婚は「当事者同士で話し合った結果」なので司法は関与しません。ですので、養育費が送られてこない場合でも何ら法的な強制処置は取れないのです。
 
 これが調停離婚であれば、家裁判所の下した結論ですので男性側の給与から強制的に天引きするなり、強制執行的に取り立てることも可能になりますが、協議離婚では相手が払わなければ「泣き寝入り」しかないのです。ですので、シングルマザーに対して「養育費と慰謝料で楽に暮らせていいわね」などと言ってはならないのです。

 余談ですが、米国では離婚に当たり、必ず司法が関与しますので決められた慰謝料、養育費が払われない場合、即時に強制執行処置が取られます。ですので、米国のシングルマザーは余裕があるのです。

 せめて行政が手を差し伸べてくれればよいのですが、行政が用意してくれる児童手当などは「要件を満たしていないとダメ」「手続きが煩雑」なことが多く、多忙なシングルマザーには「手に負えない」ことが非常に多いのです。
 
 こういった負のスパイラルに陥らないために、無料、あるいは格安の託児所が存在します。さすがに行政もそれくらいは用意してくれているのですが、そういった託児所は非常に少なく、順番待ちが1000人ということも珍しくないので、結局は何の役にも立たないのです。

 なぜ、こういった行政整備が進まないかというと、女性だけでなく世間の一般論として「シングルマザーになるのは自己責任である」という認識が強いこともあります。あるシングルマザーが格安のベビーシッターを見つけ、そこに頼んだところ、そのベビーシッターが、その子を死なせてしまう、と言う事件が起きたことがありました。すると、ある政治家は以下のような発言をしたのです。

「そもそも自分の子供をそんな身も知らない人に預ける神経が分からない。本当に自分の子供を大事に思うのなら、ちゃんとした所に預けるべきだろう」

 そうなってしまう事情を知らない無知からくるとはいえ、こういった言葉は「事情を知らない人」から見たら「その通りだ」とも受け取られてしまうのです。そして「社会的地位のある人が言うのだから、正しいのだろう」という形で一般化してしまうのです。

 余談ですが、以前に東京都で介護費用を都が負担する割合を上げる法案が出された時に、当時の都知事は「何故、親不孝な息子の代わりを都がしなければならないのだ」と発言、物議を醸しました。しかし、その都知事は前言撤回をしようとはしませんでした。

 自分は恵まれている環境しか知らないから、そんな言葉が出るのでしょうが、そこには多分に前時代的な価値観も見え隠れします。高度経済成長時代には兄弟が3~4人もいるのは当たり前でした。それだけ「一人当たりの負担」は少なく済んだのですが、現代では子供は1~2人という家庭が大部分であり、平均寿命も格段に延びているのです。

 こういった状況を考えずに前時代的な物の見方しか出来ない人が行政の責任者では、とても行政に頼ることなどおぼつかないのです。

 このようにシングルマザーの置かれている社会状況は非常に厳しく、経済的に追いつめられる事も珍しくありません。普通の仕事では足りない、となると「裏の仕事」をするしかないのです。

出会い系サイトに希望を見出そうとするシングルマザー

 先に「シングルマザーの50%はシングルマザーの家庭出身」と書きましたが、彼女たちは自分の子供が学校で「シングルマザーの子供」であることを知られないように頑張ります。給食費や学級費の滞納などはもちろんさせませんし、服装だって「ちゃんとした格好」をさせるために奮闘努力しており、そのための費用を売春で稼いでいるシングルマザーも多いのです。

 インターネットが普及した現在、「出会い系サイト」というものが存在します。先にご紹介したデリバリーヘルスとは違い、「一定の符牒」を使って書き込みをしておくと「買春希望」の男性から連絡が来るので、そこでお金を得るという方法が一般的になっているそうです。

 ですが、この方法は危険が伴います。デリバリーヘルスの場合、元締めとなる人物がいるので、何か問題が発生した場合、元締めが乗り込んで問題解決をしてくれますが、出会い系サイトでは、誰の助けも期待できません。事実、ひどい暴力を受けたとか逆にお金を取られたというケースも後を経たないのです。

 しかし彼女達は、そんな目にあっても出会い系サイトに書き込みを続けます。それは「お金が必要」ということもあるのですが、「もしかしたら結婚してくれる優しい男性に巡り合えるかもしれない」という淡い期待もあるようです。

 親族、友人、知人、行政から孤立してしまった彼女達にとって出会い系サイトは僅かな希望の光として残されている「唯一の頼れる場所」なのです。

うつ病を患うケースも…

 あるシングルマザーの例ですが、離婚原因は夫のDVだったそうです。その暴力は凄まじく、その女性は常に恐怖にさらされながら暮らしていたそうです。しかし、より過激になったDVは、その女性に重症を負わせ、驚いた男はあわてて救急車を呼び、入院させざるをえなくなります。

 入院してきた女性を見た医師はすぐにDVの可能性に気づいて警察に連絡をします。するとケースワーカーがやってきて事情を聞き取りしてくれ、ようやく離婚が成立します。しかし離婚してからも「元夫が実家を襲うのではないか」とか「万一にも、ばったり街角で出会ったりしたら酷い目に合わされる」という妄想に取り付かれ、電車も怖くて乗れなくなってしまったそうで、結果的に重度のうつ病を患ってしまい、仕事など全く出来なくなってしまったのです。

 このケースでは幸いなことにケースワーカーさんの手助けもあり、生活保護が認められたので、それでなんとか暮らしているそうですが、これは「まだ幸運な例」なのです。ケースワーカーさんも「20人以上を一人で担当している」という状態なので、一人のシングルマザーに対応できる時間は限られてしまっており、十分に目が行き届いていない、というのが現状です。

 実情調査でも多くのシングルマザーが程度の差こそあれ、「うつ病」を患っているという調査結果もあります。

おわりに

 日本という国には、あまりにも彼女達に対する支援が無さすぎるのです。逆に偏見と差別が広がっており、本来は最もこういった実情を知らなければならないはずの立法担当者(つまり政治家)が逆に偏見と差別を助長するような言動を平気で言っており、しかもそれが、どういう結果を招くのか考えもしないのです。

 ある貧困とは無縁の女性のこんな言葉が身に染みてなりません。

「しょせん、男って、どこまでも幼稚で馬鹿な子供だからね。いくつになってもね」


【主な参考文献】
  • 鈴木大介 最貧困女子 (幻冬舎新書)
  • 鈴木大介 最貧困シングルマザー (朝日文庫)
  • 水無田 気流. シングルマザーの貧困 (光文社新書)

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  この記事を書いた人
なのはなや さん
趣味で歴史を調べています。主に江戸時代~現代が中心です。記事はできるだけ信頼のおける資料に沿って調べてから投稿しておりますが、「もう確かめようがない」ことも沢山あり、推測するしかない部分もあります。その辺りは、そう記述するように心がけておりますのでご意見があればお寄せ下さい。

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