【べらぼう】遊女が男客に誓いを立てる 指切り・爪剥ぎとはどのようなものだったのか?

 大河ドラマ「べらぼう」第37回は「地獄に京伝」。「べらぼう」では吉原の遊女と男客の様々なやり取りが描かれています。

「指きりげんまん、嘘ついたら針千本飲ます」

 という言葉を少年・少女時代に誰しも1度は口に出したことがあるのではないでしょうか。小指と小指を絡ませるこの誓いの言葉の「指きりげんまん」は江戸時代の遊廓が発祥と言われています。遊女の中には男客に恋愛感情を持つ女性もいました。「私の想いはずっと変わらない」ということをその男客に示すため、遊女の中には自分の指を切り落とし、男客に捧げる人もいたのです。当然ですが、指は1度切ってしまえば元に戻ることはありません。よって好意を寄せる相手に自分の重大な覚悟を示す証拠にもなったのです。

 指切りは「ちょっと・・」という人には「爪剥ぎ」というものもありました。これも痛そうではありますが、爪を上手く2枚に剥いで痛まない術もあったとのこと。「医学的方法を以てすれば爪剥ぎはそれほどむずかしいことではない」との記述もありますが、指切りよりはましですが、それでも痛そうです。指切りには「ずぶ切り」と「そぎ切り」があり、後者は跡が目立たなかったため、よく行われていました。木枕の上に指を支えて置いて切って貰うのですが、切られた本人(遊女)は大体は気絶してしまったとのこと。こうして切断された小指は男のもとに送られる事になります。

 しかし、男のことは好きでも指を切るのは勘弁という遊女がいてもおかしくありません。そうした遊女は他人の指を自分の指として相手に送ったのです。死刑女囚の手から切り取った指を買い取る者もいたようです。誓いを立てる方法としては「髪切り」もありましたが、これが一番難易度が低いと思われます。髪切りの方法も様々ありましたが、自ら髪を切らずに相手の男に切って貰うことが多かったようです。


【主な参考文献】
  • 中野栄三『遊女の生活』(雄山閣出版、1965年)
  • 中野栄三『新版 廓の生活』(雄山閣出版、1972年)
  • 小野武雄『吉原・島原』(教育社、1978年)

  • ※この掲載記事に関して、誤字脱字等の修正依頼、ご指摘などがありましたらこちらよりご連絡をお願いいたします。
  • ※Amazonのアソシエイトとして、戦国ヒストリーは適格販売により収入を得ています。
  この記事を書いた人
濱田浩一郎 さん
はまだ・こういちろう。歴史学者、作家、評論家。1983年大阪生まれ、兵庫県相生市出身。2006年皇學館大学文学部卒業、2011年皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。専門は日本中世史。 武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー、日本文藝家協会会員。兵庫県立大 ...

コメント欄

  • この記事に関するご感想、ご意見、ウンチク等をお寄せください。