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【べらぼう】「光る君へ」と共通する文化 遊女の源氏名の付け方とは?

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 大河ドラマ「べらぼう」第40回は「尽きせぬは欲の泉」。

 禿(高級遊女に仕えて見習いをした少女)であった少女もいつかは遊女として一本立ちしていきます。新造出(姉女郎が禿の女を新しく自分の妹分として披露すること)を経て「新造」(姉女郎の後見付きで新しく務めに出た若い遊女)となるのですが、その時に源氏名が付けられることになります。

 源氏名という用語は今でも残っています。水商売に勤める女性などが仕事の上で名乗る仮名のことです。源氏名とは『源氏物語』(平安時代中期の女性・紫式部が著した長編物語。式部の生涯は大河ドラマ「光る君へ」でも描かれた)五四帖の題名(例えば若紫・薄雲・夕霧など)に基付いて命名されたことから、そう呼ばれました。朝廷の女官が『源氏物語』の帖名を仮名として与えられたのに始まるとされています。そうした風習は武家にも伝わり、江戸時代においては遊女の妓名にも源氏名が使用されました。

 有名な遊女の源氏名の事例としては高尾、瀬川、花扇などが挙げられます。しかし源氏名は多種多様であり、大和・土佐・越中・出雲、葛城・吾妻などのように国名や地名が付けられることもありました。そういった場合は、その源氏名は遊女の出身地であったと推測されます。

 さて『源氏物語』の作者・紫式部は、父が藤原為時であったことから「藤式部」と呼ばれていました(父・為時は式部省の官僚の式部大丞であった)。紫式部は『源氏物語』を執筆し、貴族の間で話題となるのですが「紫式部」の「紫」は物語の登場人物「紫の上」に由来するとも考えられています。「藤式部」にしても「紫式部」という呼称にしても、彼女本人の出自(出身)や特徴と深く関連していることが分かります。

 遊女にも本名というものがありましたが、源氏名を付けられるということは、そうした過去の自分と決別することでもありました。源氏名を付けられることにより決意を新たにする女性がいる一方で、遊郭で生きるしかない自分の運命に暗澹とした想いになる女性も多くいたことでしょう。


【参考文献】
  • 北小路健『遊女  その歴史と哀歓』(人物往来社、1964年)
  • 小野武雄『吉原・島原』(教育社、1978年)

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  この記事を書いた人
濱田浩一郎 さん
はまだ・こういちろう。歴史学者、作家、評論家。1983年大阪生まれ、兵庫県相生市出身。2006年皇學館大学文学部卒業、2011年皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。専門は日本中世史。 武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー、日本文藝家協会会員。兵庫県立大 ...

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