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新選組は多摩に「シンパ」を持っていた!

 幕末の京都で治安維持活動に奔走した新選組。京都の人々からは恐れられ、嫌われていたと言われていますが、局長の近藤勇や副長の土方歳三の出身地である多摩地方(東京都)には、新選組のシンパ(= 同調者)と言える人々がいました。

多摩で生まれ育った近藤と土方

 まずは、近藤と土方について生い立ちを紹介しましょう。

 近藤勇は、天保5年(1834)に武蔵国多摩郡(調布市)の農家に生まれました。少年時代から豪胆だったようで、剣術家としての素養を見込まれ、天然理心流3代目・近藤周助の養子となり、やがて4代目を継ぐことになりました。

 土方歳三は、近藤より1歳年下の天保6年(1835)生まれで、武蔵国石田村(日野市)の農家の出です。実家の石田散薬を行商していた頃から天然理心流の道場に通い始め、近藤勇のもとで剣術の修行に励むことになります。

 近藤は文久3年(1863)に幕府の浪士組に参加し、土方ら試衛館の門下生とともに上洛します。京都では浪士組から離れ、京都守護職の松平容保を頼って会津藩お預かりとなり、やがて新選組誕生へと至るのです。

佐藤彦五郎(出典:Wikipedia)
佐藤彦五郎(出典:Wikipedia)

新選組のシンパ① 佐藤彦五郎

 日野宿の名主に佐藤彦五郎という人物がいました。文政11年(1828)生まれで、近藤勇より6歳年上です。

 彦五郎は近藤周助のもとに入門し、免許皆伝となって自宅に剣術道場を開きます。道場には、妻の弟である土方歳三をはじめ、試衛館から沖田総司や井上源三郎がやって来て、剣術の指南をしていたそうです。

 近藤勇とも昵懇(じっこん)の仲となり、次に紹介する小野路村の小島鹿之助をまじえて義兄弟の契りを結ぶほどでした。近藤が浪士組に参加する際も相談に乗り、近藤の背中を押したとも言われています。

 新選組が京都滞在中には物心両面で援助するとともに、多摩で天然理心流の剣術を守り続け、自らも農兵隊を組織して一揆を鎮圧するなどの活躍を見せました。

新選組のシンパ② 小島鹿之助

 もう一人、支援者として忘れてはならない人物が小島鹿之助です。天保元年(1829)生まれで、近藤勇より5歳年上になります。

 多摩南部の小野路村(町田市)の寄場名主の鹿之助は、近藤周助のもとで天然理心流を学び、小野路村に出稽古へ訪れていた近藤勇とも親しくなります。

 学問の造詣が深いことで知られ、近藤は鹿之助から漢学を習っていました。佐藤彦五郎とも交流があり、近藤をまじえて3者で義兄弟の契りを交わしています。

 鹿之助は、上洛して新選組を結成した近藤や土方と書簡を交わし合い、彦五郎同様に物心両面で支え続けてきました。また、小野路農兵隊を組織し、鍛錬に励んでいたそうです。

錦絵「勝沼駅近藤勇驍勇之図」(月岡芳年画、1880年、東京都江戸東京博物館蔵)=出典:Wikipedia
錦絵「勝沼駅近藤勇驍勇之図」(月岡芳年画、1880年、東京都江戸東京博物館蔵)=出典:Wikipedia

故郷に錦を飾った近藤と土方

 会津藩お預かりの身分だった新選組は、慶応3年(1867)に幕府直轄の組織となり、近藤や土方は晴れて幕臣となりました。

 翌年、京都から江戸へ戻った近藤は、新選組から名を改めた甲陽鎮撫隊を率いて甲州街道を進軍します。行軍の道程には、生まれ育った懐かしい多摩の地がありました。

 近藤は直参旗本なので駕籠(かご)に乗っていますし、その傍らには馬にまたがる土方歳三の姿が・・・。すでに徳川幕府は消滅し、幕臣とは名ばかりとなっていましたが、多摩の人々は誇らしげに見守っていたそうです。

 しかし、甲陽鎮撫隊は勝沼の戦いで新政府軍に惨敗。近藤勇は「大名に出世する」という夢が潰え、刑場の露と消えてしまいます。土方も近藤の後を追うように函館戦争で壮絶に散ったのでした。

おわりに

 明治になって佐藤彦五郎と小島鹿之助は、新選組と近藤勇、土方歳三の足跡を後世に残すべく尽力します。二人をはじめ、新選組のシンパだった人々が書簡、遺品などを大切に保管したおかげで、近藤や土方の武勇が今に語り継がれているのです。

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  この記事を書いた人
マイケルオズ さん
フリーランスでライターをやっています。歴女ではなく、レキダン(歴男)オヤジです! 戦国と幕末・維新が好きですが、古代、源平、南北朝、江戸、近代と、どの時代でも興味津々。 愛好者目線で、時には大胆な思い入れも交えながら、歴史コラムを書いていきたいと思います。

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