「光る君へ」大晦日に内裏に押し入った強盗がやった事とその素性
- 2024/09/30
大河ドラマ「光る君へ」第37回「波紋」では、盗賊事件が描かれました。
寛弘5年(1008)の大晦日の夜、内裏で一つの事件が発生します。その恐ろしい事件の様を紫式部は日記に記述しているのです。事件が起こるまでは、穏やかな時が流れていました。紫式部は、お歯黒を付けたり、ちょっとしたお化粧をしていたのです。そして寛いでいるところに、辨の内侍がやって来て、話をします。その後、内侍は寝てしまったそうです。内匠の女蔵人は、長押の下に座り、童女に縫い物の仕方を懸命に教えたりしていたのでした。
穏やかな日常を破ったのは、突然の大声でした。御前の方で、大きな声がしたというのです。紫式部は驚き、内侍を起こそうとしますが、既に寝ており、すぐには起きなかったとのこと。夜に地震が発生しても、すぐに気が付き起きる人と、そうでない人がいますが、それと同じと言えるでしょうか。激しい大声が聞こえた後は、人が泣き騒ぐ声が聞こえてきたそうです。紫式部はその声を聞き、恐ろしくて、どうして良いか分からない混乱状態となります。誰でも夜間に人の大声や泣き叫ぶ声を聞いたら、びっくりしてしまうでしょう。
式部は最初、火事でも発生したのかと思ったようですが、そうではありませんでした。一体、何が起こったのか。紫式部は、寝ている内侍を乱暴につついて、目を覚させ、声のする方向に向います。するとそこには、女房2人がおりました。2人共、裸だったようです。内裏に強盗が入り、女房2人の装束を奪って去ったのでした。
強盗といっても、単なるその辺の強盗ではなく、内裏に出入りできる身分の人間の所業と考えられています。盗人が内裏に押し入ったということで、紫式部は人を呼ぼうと手を叩き、大声を出しますが、誰も来ません。中宮付きの侍なども、既に帰ってしまっていたのです。
不用心と言えば、これほどの不用心はありません。しかしこれが当時の内裏の有様であったのです。
【主要参考文献一覧】
- 清水好子『紫式部』(岩波書店、1973年)
- 今井源衛『紫式部』(吉川弘文館、1985年)
- 倉本一宏『紫式部と藤原道長』(講談社、2023年)
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