【愛知県】長篠城の歴史　長篠の戦いの前哨戦となった舞台！

長篠城とは

　長篠城は現在の愛知県新城市長篠に所在した平城です。現在の豊川と宇連川の合流点、標高約６０メートルの段丘上に立地しています。別名を扇城または末広城というのは、川の合流点を背にして城が扇のような形に展開されているためです。

　天明年間（１７８１～８９年）に描かれた長篠古城絵図によると、北方から流れる ”矢沢” という小川が城を二分するように豊川へと合流していたといいます。

　矢沢の東側には野牛郭・本丸・帯郭・巴城郭・瓢郭・蔵屋敷が設けられ、西側には弾正郭と家老屋敷がありました。

　本丸と帯郭の間には内堀とかき上げの土塁が築かれ、帯郭と巴城郭の間にも同じく堀と土塁の防御線が設けられていました。これは矢沢と連絡することで、天然地形を取り入れた外堀としても機能していたと考えられています。

　巴城郭の東側に位置していたのが瓢郭で、この東端の沢を利用して搦手門が設けられました。本丸より一段低い部分が野牛郭で、生活用水としての泉があった場所です。

　豊川と矢沢、そして土塁で囲まれた部分が弾正郭で、その北に家老屋敷があったことから強力な攻防の機能を担った部分といえるでしょう。また、大手門は本丸の北西側、蟻塚の付近にあったと考えられています。

　本丸の北側には堀と二の丸があり、さらにその北側にも堀が設けられ、二の丸の外側に三の丸が配置されていました。

　城の南方は河川合流点の断崖で守られていますが、北側はほぼ平地であったため、このように厳重な防御線が構築されていました。

長篠城の歴史

　築城は永正５年（１５０８）、今川氏親の部将であった菅沼元成によるものとされています。以降、菅沼氏五代の居城として用いられますが、永禄３年（１５６０）に今川義元が桶狭間の戦いで敗死すると、長篠城は徳川家康に従うようになります。

　元亀２年（１５７１）、武田信玄の配下であった天野景連の攻撃を受け、一時的に武田氏への服属を余儀なくされます。しかし天正元年（１５７３）、武田信玄の病状が重篤化したことにより武田氏の西上作戦は保留となり、撤退した武田軍の隙をついて徳川家康が長篠城を奪還。松平景忠を城番として入城させました。

　天正３年（１５７５）には、旧今川・徳川氏配下で、武田氏から離反して徳川氏に帰参した奥平貞昌が長篠城主に就任。５００の兵で当地の守備にあたりました。

　同年、武田勝頼率いる武田軍が約１万５千という大兵力で同城を包囲。これが長篠の戦いの前哨戦である長篠城の戦いです。

　寡兵での籠城戦のさなか織田・徳川本隊への援軍要請に向かった鳥居強右衛門が、帰路武田軍に捕らわれたものの、長篠城の目前で磔にされながら援軍到着の知らせを伝えたことはあまりにも有名です。

　長篠の戦いで武田軍は大敗しますが、当城の損傷も激しく、天正４年（１５７６）に奥平貞昌が剛ヶ原の新城城に移転しことにより同城は廃城となりました。

　城の部材は新城城や吉田城に転用されたともいわれ、現在では大手門の扉だけが長篠に保存されています。元禄１１年（１６９８）に一色直興が当地を拝領し、陣屋は長篠城二の丸跡に設けられたといいます。

　時代が下り、城跡の大部分は耕地や住宅、鉄道用地となりましたが、昭和４年（１９２９）には長篠城址の重要部分が国の史跡に指定。昭和39（1964）にかつての帯郭跡に長篠城址史跡保存館が建てられました。

　平成１８年（２００６）、長篠城は日本１００名城のひとつに選定されています。

おわりに

　戦国最強の騎馬軍団ｖｓ最新兵器の鉄砲戦術、という文脈で語られることの多い長篠の戦いですが、その前哨戦には激しい籠城戦を耐えきった長篠城の戦いがありました。鳥居強右衛門の事績はいまなお語り継がれているため、当地を訪れる機会にはぜひとも思いを馳せたい人物のひとりですね。

補足：長篠城の略年表

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【主な参考文献】

• 『日本歴史地名体系』（ジャパンナレッジ版）　平凡社
• 『国史大辞典』（ジャパンナレッジ版）　吉川弘文館
• 新城市HP　国指定史跡長篠城跡のご案内