大河ドラマ「べらぼう」座頭らが武士に借金を踏み倒されないために案出した強硬手段とは?

 大河ドラマ「べらぼう」第13回は「お江戸揺るがす座頭金」。

 戦国時代が終わり、天下泰平の江戸時代になると貨幣経済が急速に発達していきます。武士は年貢米を換金しなければ生活していけない状況となり、札差(蔵米取りの旗本・御家人に対して、蔵米の受け取りや売却を代行して手数料を得ることを業とした商人)から借金をする武士が増加していきました。

 武士に金を貸したのは、札差のみでなく、座頭も同様でした。座頭が金を貸すのは、旗本などの武士が多かったのですが、過分の高利でなかなか金を返せない武士の中には取り立てに来た者を槍で追い返したり、踏み倒す者もいたのです。

「金借りて高利座頭をかみ砕く、さっても強いお旗本かな」
という歌(落首)もあるように、座頭らも取り立てに苦労した面もあったのでした。氷砂糖のように噛み砕かれないためにどうすれば良いか。座頭らは新たな方策を考え出します。

 先ず座頭らは1人ではなく大勢で「武家方」の玄関に押し寄せます。そして「高声」(大声)で、金を返さない者の「雑言」(あれこれ悪口)を言い放ったのでした。それは日中だけでなく、夜も行われたといいますから大変です。座頭らは借主(借り手)に「恥辱」を与えて返金させんとしたのです。

 徳川幕府も座頭が借金を催促するのは「勝手次第」(思い通りに振る舞って良い)としながらも、武家方の玄関まで大勢で押しかけて「雑言」を申すことは「法外」(著しく度を越していること)とし、そうした事はしないよう令します。もしこれに背く者がいたならば吟味するとしたのでした(明和2年=1765年)。明和の布達も奉行所が吟味し、咎める事があっても法外の行為が止まなかったので出されたのです。

 しかし明和の布達があっても、座頭らによる「高利金貸出」「不法な催促」は止むことはありませんでした。安永7年(1778)の町触にも「盲人」「浪人」が高利金を貸出し、不法な取り立てをしていることが見えるからです。徳川幕府の堪忍袋の緒はついに切れることになります。


【主な参考文献】
  • 三田村鳶魚『史実より観た歌舞伎芝居』(崇文堂、1923年)
  • 視覚障害者支援総合センター編『視覚障害 その研究と情報』67(障害者団体定期刊行物協会、1983年)

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  この記事を書いた人
濱田浩一郎 さん
はまだ・こういちろう。歴史学者、作家、評論家。1983年大阪生まれ、兵庫県相生市出身。2006年皇學館大学文学部卒業、2011年皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。専門は日本中世史。 武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー、日本文藝家協会会員。兵庫県立大 ...

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