大河ドラマ「べらぼう」 鳥山検校が「検校」になるために必要だったことは

 大河ドラマ「べらぼう」第11回は「富本、仁義の馬面」。

 遊女・瀬川を身請けしたのは、市原隼人さん演じる鳥山検校です。鳥山検校は盲人であり、遊女・瀬川を大金でもって身請けした事で知られています。徳川幕府は盲人の保護政策として、座頭に金貸業を許可していました。盲人の貸金は「官金」(お上の金)と呼ばれ、その取り立ては厳しいものでした。また、利子は高利貸し並みだったのです。こうしたことから、世の人は「官金」を「ひど金」(酷い金)とも呼び、嫌ったのでした。

 盲人の貸金相手は武家(大名・旗本・御家人)や商人、興行人など広範囲に及んでいます。「官金」の返済に苦慮し、ついには夜逃げする例もありました。また武士が「強催促」(強引な取り立て)にあい、面目を失ったとして切腹する事例もあったと言います。以上のことから、鳥山検校がなぜ富裕となれたのか分かろうというものです。

 中世から近世にかけては当道座(男性盲人の自治的職能互助組織)があり、そのトップが検校です。その次が別当。次が勾当。最下位が座頭です。四階に分かれていた訳ですが、それで終わりではありません。四階は更に「十六官・七十三刻」に細分化されていたのです。ちなみに最下位の座頭は「一度・二度・三度・四度」の段階に分かれていました(勝新太郎さん主演映画『座頭市』の「座頭」です)。

 そうした位は金で買います。位を金で買っていき、七十三回買うと最高位の検校に到達したのです。検校になるには多額の金(719両)が必要だったことが分かります。強欲非道な人間でなければ検校になれないと『世事見聞録』(江戸時代後期の随筆。作者不詳)には述べられています。ちなみに当道座は公認のものであり、自治が認められていました。死罪や遠島(流罪)に相当するような重犯罪でも「座法」で処断されていたのです。



【主な参考文献】
  • 八剣浩太郎『銭の歴史』(大陸書房、1978年)
  • 原田信一「近世の座頭にみる職業素描」(『駒沢社会学研究  文学部社会学科研究報告』29、1997年)

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  この記事を書いた人
濱田浩一郎 さん
はまだ・こういちろう。歴史学者、作家、評論家。1983年大阪生まれ、兵庫県相生市出身。2006年皇學館大学文学部卒業、2011年皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。専門は日本中世史。 武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー、日本文藝家協会会員。兵庫県立大 ...

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