【麒麟がくる】第5回「伊平次を探せ」レビューと解説

将軍家が鉄砲に目をつけ、本能寺でつくらせている。そのうわさに興味を持った道三に命じられ、光秀は近江の国友村へ、そして再び京へ旅に出ます。今度は旅費を全額出してもらうことをしっかりと確認して(笑)

京では、初回に出会った松永久秀、三淵藤英ほか、藤英の弟である細川藤孝、さらに政権トップの足利義輝に出会います。

探される男・伊平次

鉄砲の秘密を探るためには、まず分解して仕組みを知る必要がある。光秀はそう考えます。

そんなときに伝吾から「関で刀鍛冶をしていた伊平次という男が、今は近江の国友村で鉄砲をつくったり修理したりしている」といううわさを聞きます。

そういうわけで、光秀は伊平次を探しに国友村へ……。

美濃の関(現在の岐阜県関市)は刀工の拠点があったことで有名です。「孫六兼元」といえば刀好きにはピンとくるでしょうが、「関孫六」といえば、きっと誰もが一度は目にしたことがあるはず。室町から現代まで脈々と続いていて、今や包丁ブランドとして有名ですね。

国友村では鉄砲伝来の翌年、天文13年(1544)には将軍・足利義晴の命で鉄砲が製作され始めました。第5回の時点ではそこから4年。すでに鉄砲の生産拠点として名をあげていました。

現時点では、将軍も久秀も実戦での利用を視野に入れていませんが、やがて桶狭間の戦いにて、国友村の鉄砲が初めて使われることになります。

そんな一大拠点の国友村にいて、将軍・義輝や松永久秀にも才能を買われているのが伊平次です。酒癖が悪く、昔から悪ガキだったと語られましたが、管領細川晴元と家臣・三好長慶の関係、さらには将軍家との関係まで、しっかりと中央政権の情勢を見る目を持っている男でした。

さすが、将軍家や多数の大名家が出入りしたであろう国友村にいただけあって、かなり賢いのがわかります。


細川藤孝・足利義輝が登場!

伊平次が京の本能寺にいると聞きつけて本能寺へ。その門前で出会ったのが、のちに親友、そして縁戚になる細川藤孝です。

眞島秀和さんが演じているので随分大人に見えますが、この時点での藤孝はまだ14歳くらい。次いで登場する義輝は向井理さんが演じていますが、藤孝のさらにふたつ下なので、12歳(満年齢)の少年です……。

藤孝は光秀よりも5、6歳年下。血気盛んで好戦的なキャラクターとして登場しました。ここからどう成長していくのか、光秀とどのように親交を深めていくのかが楽しみですね。



光秀も鹿島新当流?

藤孝と刀を交えたシーンでは、止めに入った義輝が「見事な太刀さばきじゃ。鹿島の太刀と見たが、そうか?」と尋ねます。

足利義輝は「剣豪将軍」とも呼ばれ(※剣豪としての義輝は創作性が強く、免許皆伝した記録はない)、塚原卜伝に指導を受けた弟子として伝わっています。

義輝に仕えた藤孝も卜伝に師事しました。この塚原卜伝が開いたのが「鹿島新当(當)流」、つまり義輝が言った「鹿島の太刀」のことです。

光秀の流派は不明ですが、「麒麟がくる」では鹿島新当流だったという設定で描かれました。卜伝の門下には、今川氏真や山本勘助などがいたともいわれます。

今回、藤孝のほうはわかりやすい「車の構え」でした。

関係がいいとは言えない中央政権周辺

将軍家が鉄砲を作らせ、さらに三好長慶の家臣・松永久秀も鉄砲を作らせようとしている。久秀は、鉄砲は実戦で使うのではなく、敵に戦をしようという気をおこさせないようにするためのもの、つまり戦の抑止力の道具だ、と言いました。

同じく、藤英も「二度とこの都で戦をするつもりはない」と言っています。

そうはいうものの……両者はバチバチに火花を散らし合っています。久秀は将軍が鉄砲を集めるは細川晴元を討つためだと思っている。実質、中央政権の実権を握っているのは管領細川氏ですから、奉公衆がそれをおもしろく思っていないことはわかっているのです。

一方で、管領細川家でもきな臭い動きがあります。晴元と家臣の長慶は主従関係にはあるものの、互いに信頼関係があるとは言い難いのです。

長慶にとって晴元は父の仇と言っていい相手。晴元にとっても、家中の主力といえるほどの軍事力をもった三好は頼もしいというよりも脅威なのです。

天文17年(1548)、まさに第5回のころ、三好長慶は晴元と対立し始めます。8月には敵対する三好政長を討伐してくれと願い出ましたが、聞き入れられませんでした。そして10月、長慶は晴元と対立する細川氏綱方につき、晴元から離反することに。次回「三好長慶襲撃計画」は、このような状況下で展開します。

さて、次回放送に向けての要チェック記事は細川晴元、三好長慶など3本です。ぜひご参照のほど、よろしくお願いいたします!






【参考文献】
  • 『国史大辞典』(吉川弘文館)
  • 今谷明・天野忠幸 監修『三好長慶 室町幕府に代わる中央政権を目指した織田信長の先駆者』(宮帯出版社、2013年)
  • 藤岡周三『戦国ドキュメント 松永久秀の真実』(文芸社、2007年)
  • 長江正一 著 日本歴史学会 編集『三好長慶』(吉川弘文館、1968年 ※新装版1999年)
  • 二木謙一編『明智光秀のすべて』(新人物往来社、1994年)
  • 高柳光寿『明智光秀』(吉川弘文館、1958年)

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  この記事を書いた人
東滋実 さん
大学院で日本古典文学を専門に研究した経歴をもつ、中国地方出身のフリーライター。 卒業後は日本文化や歴史の専門知識を生かし、 当サイトでの寄稿記事のほか、歴史に関する書籍の執筆などにも携わっている。 当サイトでは出身地のアドバンテージを活かし、主に毛利元就など中国エリアで活躍していた戦国武将たちを ...

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