【豊臣兄弟!】さらば半兵衛…小寺官兵衛へ受け継がれる家紋「黒餅」に込められた熱い思いとは

  • 2026/06/12
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 大河ドラマ『豊臣兄弟!』皆さんも観ていますか?筆者も毎週欠かさず楽しみにしています。

 さて、第23回放送「さらば半兵衛」では、いよいよ竹中半兵衛(演:菅田将暉)が最期の時を迎えるようです。半兵衛は第22回放送「播磨大誤算」で、小寺官兵衛(演:倉悠貴)に対して「(心から)仲間になって欲しい」と懇願していました。

 すでに羽柴筑前守秀吉(演:池松壮亮)へ臣従し、人質まで出していると言うのに、まだ疑うのでしょうか。その通り、半兵衛は官兵衛がまだ秀吉に心服していない≒いざとなれば人質に出した我が子・松寿丸(しょうじゅまる/まつじゅまる)を見捨ててでも裏切る本心を見抜いていたのでした。

 そんな半兵衛は、官兵衛に対して自家の家紋「黒餅(こくもち)」を譲ります。この家紋にはどんな由来があり、半兵衛はどんな思いで家紋を託したのでしょうか。

懐に入れた鏡餅が……

 竹中家の家紋は丸に九枚笹(くまいざさ)。すなわち、丸で囲んだ中に九枚の笹葉があしらわれたものでした。しかし半兵衛の代になって、この「黒餅」を用いるようになります。

「黒餅」の紋
「黒餅」の紋

 『寛政重脩諸家譜』によると、半兵衛はある時、二十三夜の月待ちをしていました。月待ちとは、要するに月見であり、月の化身である勢至菩薩(せいしぼさつ)をお祀りするイベントです。

 この時にお供えした鏡餅を、半兵衛は懐に入れて出陣しました。兵糧として食べるつもりだったのか、あるいは勢至菩薩のご加護を得ようとしていたのか、恐らくはそんなところでしょう。

 するといきなり、どこからともなく矢が飛んできました。戦場ではよくある流れ矢、あるいは誰かに狙われたのかもしれません。矢は半兵衛の胸に命中しましたが、何と懐に入れた鏡餅が、矢を食い止めてくれたのです。

 よく「たまたま懐に入れていた○○のお陰で命拾いした」という幸運な展開でした。これは勢至菩薩のご加護に違いあるまい。そう思ったのか半兵衛は、黒餅を家紋としたのです。

黒餅について

 ちなみに餅は大抵白いものですが、黒餅とは何が入っているのでしょうか?現代ではあまり黒い餅というものを見聞きしませんが、例えば武家には矢口餅(やぐちもち)を食べる習慣がありました。

 矢口餅とは、山の神様を祀り、武家の男子が初めて仕留めた獲物を供える矢口祭(~のまつり)で食されるものです。色は赤・白・黒の三色が基本で、それぞれ血・雪・土を意味すると考えられます(※諸説あり)。

 血は仕留めた獲物に対する悼み、雪は初めての神聖さや特別感、そして土は大地の恵みに対する感謝が込められました。冬の雪原に獲物を仕留めた情景が目に浮かび、この手で生命のやりとりを遂げた昂揚感か伝わってくるようです。

 半兵衛が家紋としての黒餅を選んだのは、自身が病弱だったことから、大地の生命力にあやかろうとしたのかも知れませんね。残された時間が少ないことを自覚していたからこそ、少しでも生き永らえたいと願ったことでしょう。

官兵衛に受け継いだ思い

 半兵衛は天正7年(1579)6月13日に世を去りますが、その思いは家紋と共に小寺官兵衛に受け継がれました。

 叶うことなら一緒に秀吉を支え、天下を獲る大願成就を見届けたかったことでしょう。しかしそれが叶わぬなら、せめて自分の思いを家紋に託し、受け継いでもらいたい。半兵衛はそう思ったのかも知れません。官兵衛は半兵衛の思いを受け継ぎ、智略を尽くして秀吉に天下を獲らしめるのでした。たかが家紋と言うなかれ。そこには武士の名誉が象徴され、時として実利いや生命以上に重んじられたのです。

 かくして黒餅の紋は半兵衛から官兵衛に受け継がれ、黒田家の家紋として後世に知られることとなったのでした。

終わりに

家紋 丸に九枚笹 黒餅

今の呈譜に、半兵衛重治あるとき二十三夜の鏡餅を懐にして出陣せしに、矢来りて胸に中る(あたる)といへども、彼(かの)餅に留りて恙(つつが)なかりしかば、これより黒餅をもつて家紋とす。其後(そののち)故ありて黒田官兵衛孝高に譲り與ふ(与う)といふ。
※『寛政重脩諸家譜』巻第三百七十 清和源氏(支流)竹中

 今回は竹中半兵衛が黒田官兵衛に受け継いだ黒餅の家紋について、その由来を紹介しました。

 志半ばに世を去った半兵衛の無念はいかばかりでしょうか。しかし彼の志は官兵衛に受け継がれ、熱く脈打っていたはずです。

 ちなみに家紋を受け継いだ理由として、官兵衛が荒木村重に捕らわれている間に、織田信長から殺すよう命じられていた松寿丸(しょうじゅまる。後の黒田長政)を半兵衛が匿ったお礼(※)とも言われます。
(※)お礼をする側がなぜ貰うの?と思うかも知れませんが、家紋をもらい受けることはすなわち「あなたの一門に入ります」というコミットの意思表示でした。

 果たして大河ドラマ『豊臣兄弟!』では、いわゆる二兵衛時代の終焉と、熱く受け継がれる志がどのように描かれるのでしょうか。菅田将暉(半兵衛)と倉悠貴(官兵衛)の協演を楽しみにしています!

【参考文献】
  • 池内昭一『竹中半兵衛のすべて』(新人物往来社 1996年)
  • 『寛政重脩諸家譜 第2輯(国立国会図書館デジタルコレクション)』
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  この記事を書いた人
鎌倉の最果てに棲む、歴史好きのフリーライター。時代の片隅に息づく人々の営みに強く興味があります。 得意ジャンル:日本史・不動産・民俗学・自動車など。 執筆依頼はお気軽にどうぞ!

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