再整備で景観やイメージを一新した池袋西口公園。その名称もいずれ消えてなくなる、か!?

  • 2026/10/14
:フリーライター
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「池袋西口公園」は昔の名前?

 先日、友人と池袋で待合せした時のこと、「グローバルリングの前にいるからね」という、LINE の着信画面を目にして、一瞬、戸惑った。それが池袋西口公園だと理解するまで、ほんのわずかの時間を要した。

グローバルリング
グローバルリング

 池袋西口公園の真ん中にあるリング状の大きな屋根には「GLOBAL RING」と書かれている。公園が再整備された時に設置されたもので、最近は待合せのランドマークになっているようだった。また、それを公園の正式名称のように思っている人も少なくなさそう。

 私の友人も、

「えっ、池袋西口公園は昔の名前でしょ。いまはグローバルリングに改称したのだろ?」

なんてことを言っていた。それがホントだと嫌だな。私のように「西口公園」の呼び名に慣れている者には、かなり違和感がある。「グローバルリング」と言われても、すぐには場所が思い浮かばなかったし。

 豊島区のHPを見てみると、区内の公園リストでは「池袋西口公園」の名称になっている。しかし、その紹介文には〝 令和元年の新たな劇場公園「GLOBAL RING」として生まれ変わりました〟とある。

 いったい、どっちなんだよ!

 突っ込みたくなるのだけど。普通に考えれば、正式名称は「池袋西口公園」のままなのだが、再整備後の〝愛称〟として「グローバルリング」の名がつけられて、それがしだいに定着してきた。と、そんな感じだろうか。

 気になってきたから、実際に公園まで行って確かめてみる。と、入口のところには「池袋西口公園」と書かれたプレートが設置されていた。やっぱり、正式名称は変わっていない。これで一件落着……のはずが、プレートに添えられた 「 IKEBUKURO NISHIGUCHI PARK」という英語表記を目にして、愕然となってしまう。

 「IKEBUKURO WEST GATE PARK」ではなかったんだ!?と、池袋西口公園がグローバルリングに変わるよりも、さらに強い衝撃と違和感を覚えてしまった。ドラマの影響が強かっただけに。

 『池袋ウエストゲートパーク』は、2000年4月に放送されたテレビの連続ドラマ。池袋を舞台に若者たちの人間関係や街のトラブルなどが描かれて、当時は私もかなりハマッて観ていた。いまでも西口公園に来ると、ドラマのテーマ曲『忘却の空』が耳の奥底から聴こえてきたりもする。

 しかし、カラーギャングが社会問題になった荒れた時代の話なだけに、ドラマを観て池袋に「危ない街」「怖い街」といった印象を抱いてしまう人も多かったようで、公園のリニューアルと「グローバルリング」の愛称は、そんな過去のイメージを払拭する目的があったのかもしれない。

「池袋ウエストゲートパーク」で長瀬智也が演じる主人公マコトが通い詰めていたボウリング場。
「池袋ウエストゲートパーク」で長瀬智也が演じる主人公マコトが通い詰めていたボウリング場。
南池袋公園は、ドラマでは敵対するブラックエンジェルスの溜まり場として登場
南池袋公園は、ドラマでは敵対するブラックエンジェルスの溜まり場として登場
2016年に再整備され、当時とは雰囲気を一新。芝生広場やカフェが設置され、近隣のオフィス勤務の人々がランチを楽しむ場所として人気。
2016年に再整備され、当時とは雰囲気を一新。芝生広場やカフェが設置され、近隣のオフィス勤務の人々がランチを楽しむ場所として人気。

かつては公園全体が〝巨大な喫煙所〟だった

 2000年代初頭の池袋西口公園は、カラーギャング風やヤンキー風、日焼けしたギャルの溜まり場になっていた。ドラマの影響もあったのだろう。なんだか、近寄りがたい雰囲気を醸していた。

 また、喫煙ルールが甘かった時代でもあり、園内全域が喫煙所のような有様。公園隅に喫煙所が設置されたのは、ドラマ放送後の 2000年代中頃だったと記憶している。池袋駅方面からの公園入口付近が、かつては喫煙所になっていた。かなり広いスペースだったが、それでも喫煙所に入り切れない人々が、園内のベンチや生垣に座りタバコを吹かす姿がよく見かけられた。池袋駅から近いこともあり、電車に乗る前にここで一服といった人も多かったのだろう。

いけぶくろうも「池袋ウエストゲートパーク」にはよく登場。ドラマでは山下智久が演じる「シュン」が盗んで持ち歩いていた。
いけぶくろうも「池袋ウエストゲートパーク」にはよく登場。ドラマでは山下智久が演じる「シュン」が盗んで持ち歩いていた。

 濛々と立ち昇るタバコの煙で公園の樹木が霞んで見えた。駅前の道路から西口公園を見ても、この喫煙所の存在感はかなり際立っていたのだが。現在は駅から遠く離れた東京芸術劇場の裏手に移設されている。密閉されて煙は外部に漏れず、スペースもかなり縮小されているから目立たない。

東京芸術劇場
東京芸術劇場

 喫煙所だけではない。西口公園の景観はすっかり変わってしまった。

 2015年に豊島区が策定した「国際アート・カルチャー都市構想」の目的にあわせて、西口公園を含む池袋駅周辺の4つの公園を、文化や芸術の情報発信拠点となるよう再整備することが決定する。計画に基づき西口公園のリニューアル工事が完了したのが、2019年11月のことだった。

 しかし、その直後に起こった新型コロナウィルスのパンデミックの衝撃があまりに大き過ぎて、私にはまったくそれについての記憶がない。気がついた時には西口公園の景観が激変して、なんだか、別の場所のようになっていた。と、そんな感じ。

西口公園の敷地はもともと戦前の東京府豊島師範学校の跡地だった
西口公園の敷地はもともと戦前の東京府豊島師範学校の跡地だった
鉄策にしか見えない、バングラデシュとの友好記念モニュメント。
鉄策にしか見えない、バングラデシュとの友好記念モニュメント。
1990年に制作された「平和の像」は、再整備工事後も場所を移動して健在だった。
1990年に制作された「平和の像」は、再整備工事後も場所を移動して健在だった。

 リニューアル後、真っ先に目についた激変箇所といえば、新しい愛称の由来にもなった園内中央のグローバルリングだろう。リングの下は広場になっており、正面にある「野外劇場」と一体化してイベントやフェスの会場にもなる。この野外ステージも、以前にあった貧相なコンクリート造りのものと比べて、その規模や設備は格段にバージョンアップしている。

噴水とビジョン
噴水とビジョン

 ステージ上部には幅11m×高さ3mの超大型ビジョン、また、照明や音響も最先端の設備を揃えて館内施設と同等のクオリティ。映像や音、光、広場中央の噴水などもシンクロさせて幻想的な空間がつくられる。

 広場の中央にある噴水も大変貌を遂げた。現在の噴水は、広場の床面に埋め込まれた小さな穴から水が吹き出し、傾斜した排水溝に流れてゆく。水が出てない時には何もない平らな広場として使うことができる。

広場中央の噴水
広場中央の噴水

 以前はここに、水を湛えた巨大な噴水があった。グローバルリングのなかった頃は、それが西口公園の象徴だった。『池袋ウエストゲートパーク』でも、噴水を映したシーンを幾度も目にしている。水を高々と吹きあげる噴水は、公園の外を通る道路からもよく見えたのだけど。あれ?そういえば、いまは道路側から公園が見えなくなっている。

インバウンドの拠点になりつつある!?

 改装工事前の公園入口は、現在よりも池袋駅から少し離れた場所にあった。メトロポリタン通りの歩道から、噴水や広場がよく見えていた。『池袋ウエストゲートパーク』でも、ここの歩道から西口公園を映したシーンが毎回登場していたのだが。

再整備工事後は、カフェと公衆トイレの建物ができて、道路側から公園が見えない
再整備工事後は、カフェと公衆トイレの建物ができて、道路側から公園が見えない

 いまはそこに建造物ができて視界が遮断されている。以前は園内の喫煙所横にあった公衆トイレも、この建物内に移設されて歩道側から入るようになっていた。園内にあった公衆トイレはゴミが散乱し、排水の詰まった便器から漂う異臭が充満して、ちょっと使う気にはなれなかったけど。こちらはとても清潔で、異臭はなくゴミひとつ落ちてない。西口公園の変貌はトイレにも現れる。

 公衆トイレのある建造物の公園側は『グローバルリングカフェ』が入っている。店先に並ぶテーブルに座って公園を眺めれば、なんだかパリのカフェみたいな雰囲気も。外国人観光客の姿が目立つのは、館内に多言語対応の外国人向け観光案内所も併設されているからだろうか。付近には空港リムジンバス発着場もあり、インバウンドの拠点にもなっているような。たぶん、そのあたりも意識して再整備をおこなったのだろう。

グローバルリングカフェ
グローバルリングカフェ

 現在の西口公園を見まわせば、2000年代よりも茶髪や金髪が増えている。おそらく、染めた髪ではなくリアルな髪色だろうけど。同じ〝ヤンキー〟でも、昔ここに屯していた若者たちとは違って、彼らはアメリカ北部の生まれなのだろう、たぶん。

 園内の景観や集う人々がこれだけ様変わりしてしまうと、もはや以前はどうだったか思いだせなくなってくる。そのうち池袋西口公園の名称もすっかり忘れて「グローバルリング」としか呼ばれなくなるのかもしれない。

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  この記事を書いた人
歴史、紀行、人物伝などが得意分野なフリーライター。著書に『首都圏「街」格差』 (中経文庫)、『浪花千栄子』(角川文庫)、 『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社)、『戦術の日本史』(宝島文庫)、『戦艦大和の収支決算報告』(彩図社)などがある。ウェブサイト『さんたつ』で「街の歌が聴こえる』、雑誌『Shi ...

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